団体からのお知らせ・インタビュー
2020年度 さぽーとほっと基金・新型コロナウイルス感染症対策市民活動基金の活動報告を掲載しました
さぽーとほっと基金・新型コロナウイルス感染症対策市民活動基金
さぽーとほっと基金は、札幌市が募集し、町内会・ボランティア団体・NPOなどが行うまちづくり活動に助成することで、札幌のまちづくり活動を支える制度です。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、札幌市内でも様々な分野で危機的な状況が続いていますが、市内には、感染症リスク低減対策を実施しつつ、新型コロナウイルス感染症対策に関する活動を行っている、または実施を検討している市民まちづくり活動団体があります。
新型コロナウイルス感染症対策市民活動基金は、こうした活動を応援することによって、新型コロナウイルス感染症による影響を受けた方々を支援するため、また、札幌市の市民まちづくり活動を今後も活性化させるため、「さぽーとほっと基金」内に設けている基金です。
2020年度に助成を行った団体は、29団体。助成合計額は3,000万円となりました。
下記のプロジェクトページにおいて、活動報告を掲載しましたので、ぜひご覧ください。
- オンラインを活用した子どもの学びの場づくり(Kacotam)
- 訪問型子育て支援「菜の花」継続と産前産後の不安を取り除くための訪問支援事業(子育て支援ワーカーズ 「べりぃべりぃ」)
- 小児ガン患者に対する学習支援ならびに心のケア(勇者の会)
- ステイホームの高齢者に届ける癒しのコンサートで、新しい生活様式後も演奏活動できるよう演奏家を応援する事業(札幌YWCA)
- 「安全で楽しい自転車の利活用」を「新しい生活様式」に取り入れて、札幌のまちを元気にする事業(ポロクル)
- 農業×福祉×デザインによる「レスパイト・コミュニティ」の創出」(ときの森衣食住・かなでる)
- タブレット・ネットワーク活用で、地域交流を復活させる事業(たすけ愛ふくろう清田)
- 「配信版コミュニティ放送局」創設事業(新琴似音楽祭実行委員会)
- 集まらなくてもピアサポート;リモートDV被害者支援事業(holoholo)
- 新型コロナウイルス感染症によるフードロス支援と養護施設及び医療機関等へのお弁当無償提供事業(Hokkaido Dream)
- おそとでほっと あおぞらあそびのひろば事業(さっぽろ冒険遊びの会)
- 妊娠期からの切れ目ない子ども子育て訪問事業&子ども宅食事業(NPO北海道ネウボラ)
- COVID-19に負けない!女性エンパワメント事業~女性および子どもを支える母親を支援する~(NPOピーチハウス 女性と子どもの元気の輪)
- 新型コロナウイルス感染症による、不安や悩みを抱えたシングルマザーが、安心して交流できる場で必要な情報を得られ、本来持っている力を取り戻し、子どもと前向きに暮らせるようにサポートする事業(しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道)
- 大切な人を亡くした子どもと保護者、ならびに大人のためのコロナ禍におけるグリーフサポート事業(グリーフサポートSaChi)
- ~いつも一緒にいたいから~オンラインを活用した保護猫の譲渡事業及び愛護啓発に係るビデオ等の配信事業(ニャン友ねっとわーく北海道)
- 子育て世代のための出張屋外おさがり交換会の開催とオンライン交流会(mofu会+(プラス)の開催)(子育て相互支援団体かえりん)
- 休校影響下の学びの保障をする4つの柱プロジェクト(はる)
- 新型コロナウイルス感染症に関する子供・若者・保護者の悩み事相談支援事業(訪問型フリースクール漂流教室)
- 不登校、学校について悩みを抱える子どもと保護者の居場所・相談・学習支援事業(フリースクール札幌自由が丘学園)
- おうち時間で子どもの知的好奇心を刺激し、発想力や工作力を養いながら感性を磨く「演劇体験キット」配布事業(コンカリーニョ)
- 新型コロナウイルス感染症対策と新しい生活様式をふまえた子育て支援を一歩進める事業 (子育て応援かざぐるま)
- 地域の居場所におけるオーダーメイドの相談支援事業(ねっこぼっこのいえ)
- COVIT-19による困窮対策のための小包応援プロジェクト(フードバンクイコロさっぽろ)
- 休校措置の期間中に見えた課題を子ども達の未来につなげよう事業~「食事」「学習」「運動」をオンラインで学ぼう~ (子どもの未来・にじ色プレイス)
[お役立ち情報]学級閉鎖等が急増!小学校休業等対応助成金について
急速な感染拡大により、道内各地で、学級閉鎖、学年閉鎖、学校閉鎖が急増しています。
2月1日の道教委発表によると、合計591校。この数は、全学校の3割にあたり、「第4波」「第5波」に見舞われた昨年4~8月の学級閉鎖等の数(計413校)を約1ヶ月で昨年のピーク時を上回りました。
新型コロナウイルス感染症による学級閉鎖等により、子どもの世話を保護者として行うことが必要となった方に対する助成金があります。
ぜひ、内容を確認いただき、活用ください!
◆小学校休業等対応助成金(雇用者向け)
令和3年8月1日から令和4年3月31日までの間に、以下の子どもの世話を保護者として行うことが必要となった労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主を支援します。
1.新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドラインなどに基づき、臨時休業などをした小学校など(保育所等を含みます)に通う子ども
2.新型コロナウイルスに感染した子どもなど、小学校などを休む必要がある子ども
●助成内容:有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額×10/10
対象労働者の日額換算賃金額(上限あり)×有給休暇の日数で算出した合計額を支給
※この助成金の申請者は事業主です。事業主の皆さまは、この助成金を活用して有給の休暇制度を設け、年休の有無にかかわらず保護者が希望に応じて休暇を取得できる環境を整えるよう、ご検討ください。
◆小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)
令和3年8月1日から令和4年3月31日までの間に、以下の子どもの世話を保護者として行うことが必要となったため、契約した仕事ができなくなった個人で仕事をする保護者を支援します。
1.新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドライン等に基づき、臨時休業等をした小学校など(保育所等を含みます)に通う子ども
2.新型コロナウイルスに感染した子どもなど、小学校などを休む必要がある子ども
●支援内容:仕事ができなかった日について、1日当たり以下の金額を定額支援
令和4年1月~2月:5,500円/日、令和4年3月:4,500円/日
緊急事態宣言及びまん延帽子等重点措置の対象地域に住所を有する場合:7,500円/日
[お役立ち情報]事業復活支援金 申請スタート
新型コロナウイルス感染症により事業活動に影響を受け、売上が減少した事業者・個人事業者に対する新たな支援金が、申請開始となりました。
●申請期間:2022年1月31日(月)~5月31日(火)
●給付対象:以下の2点を満たす中小法人・個人事業主
・新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者
・2021年11月~2022年3月のいずれかの月(対象月)の売上高が、2018年11月~2021年3月の間の任意の同じ月(基準月)の売上高と比較して50%以上又は30%以上50%未満減少した事業者
●給付額
・売上減少率が50%以上の場合:法人上限最大250万円(年間売上高により変動)、個人上限50万円
・売上減少率が30%以上50%未満の場合:法人上限最大150万円(年間売上高により変動)、個人上限30万円
※計算にあたっては、感染症対策として国・自治体による支援施策により得た給付金・補助金は、各月の事業収入から除きます。ただし、時短要請等に応じた協力金については、対象月の事業収入に加算します。
※一時支援金・月次支援金を受給した事業者は、事前確認が不要、提出書類の省略が可能です。
(2/1時点)NPO法人等公益法人への特例については、検討中です。
[インタビュー]どうやったら響くのか、関心持ってもらえるのか~ レッドリボンさっぽろ 沼田さん・秋山さん
特定非営利活動法人レッドリボンさっぽろ
エイズ電話相談事業
(令和3年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 保健、医療、福祉の増進助成事業)
1995年から26年、HIV/エイズに関する不安に対し、親身に寄り添った電話相談を続けているNPO法人レッドリボンさっぽろを取材しました。
近年、全国的にHIV/エイズに関連したNPO・NGOが相次いで解散し、相談先が減少しています。そんな中、レッドリボンさっぽろでは、相談しやすい夜間に、フリーダイヤルでの電話相談を継続しています。2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、札幌市でもHIV検査が一時中止となりました。「新型コロナの影響で、保健所の検査ができない。HIV検査ができるところを教えて欲しい」といった相談も寄せられました。
今回は、事務局長の沼田栗実(ぬまたくるみ・写真右)さん、事務局次長の秋山満(あきやまみつる・写真左)さんにお話を伺いました。
予防啓発も陽性者支援も両方
― まず、レッドリボンさっぽろの活動について教えてください
(沼田さん)HIVの差別・偏見をなくすことを目的に活動しています。毎週火曜日の夜(19~22時)に電話相談を実施し、HIVに関すること全般、しっかり研修を受けた相談員が対応しています。会の発足と同時に電話相談を開始したので、20年以上続いている活動になります。
一方で、電話相談のみでは受け身の活動になってしまうので、様々な所で講演活動を行っています。学校では、HIVに関する基礎的な授業を。『HIV陽性者スピーカー派遣プロジェクト』として、当事者が「感染したらどうなるの?」と語りに行く活動も、秋山さんを中心に実施しています。現在は、コロナ禍で多くのイベントが中止になってしまいましたが、楽しく、正しい知識をつけてもらえるよう、ブース出展など積極的に行っています。
国際的な活動としては、キルトを製作する活動があります。ケニアやウガンダなど、母子感染によってHIVに感染して生まれてきた子どもや、HIVでお母さんがなくなってしまった遺児に温かいキルトを送る活動です。最近は、治療が進んでエイズで亡くなる方は減少しているので、現在はキルトを送ることにこだわらず、キルトの売上金をエイズ遺児支援のNGOに寄付しています。
また、『札幌市エイズ対策推進協議会』の委員を務めるなど行政への提言活動、LGBTの方々とも協働しながら広く啓発活動を行っています。『札幌市エイズ対策推進協議会』は、年1回の開催ですが、昨年度はコロナの影響で開催されませんでした。
― コロナ禍による活動への影響はありますか?
(秋山さん)『ななかまどプロジェクト』というHIV陽性者を対象とした活動があります。相談電話では、札幌市内・道内にとどまらず、全国各地からも寄せられるのですが、「同じ立場の当事者に会ったことがない」という方が多く、このプロジェクトの一環で、10年ほど前からHIV陽性者交流会 in HOKKAIDOを企画・運営しています。コロナ禍で、対面での開催が難しくなってしまったので、オンラインでも実施しましたが、年齢層の幅が広く、インターネットの環境が整わない方もいるので、やはりオンライン開催は難しいと感じています。現在は、2ヶ月に1回開催していますが、(コロナ感染の)状況次第では中止しています。参加者は、道内の方が多く10名前後。コロナ禍以前は、全国各地から来札されていました。
HIV/エイズに関する活動をしているNPOは、全国各地に40団体以上ありますが、予防啓発も陽性者支援も両方行っている団体は珍しい方だと思います。
メインで動いているスタッフは、7名ほどです。『ヘルプスタッフ』として登録しているボランティアスタッフは50~60名いますが、実際に活動に参加できる人は限られるので、マンパワー的には常に厳しいです。コロナ禍でスタッフの募集がしにくく、活動が見えにくいことも悩みです。
電話相談は、スタッフの確保ができないと実施できないため、お盆時期や年末年始はお休みすることもあります。緊急事態宣言中なども、スタッフ確保は厳しかったです。
相談は年間360件以上、毎回7-8件あったのですが、コロナ禍で状況はガラっと変わりました。相談件数がかなり減り、昨年度の相談件数は半数ほどになりました。自宅で過ごす時間が増え、一人の時間を持つことができなくなり、電話が掛けられない状況になった方もいるのではないでしょうか。
(沼田さん)さぽーとほっと基金の助成金では、フリーダイヤルの料金を助成していただいているのですが、電話相談が減り、フリーダイヤル料金も減ったので、昨年度は助成金を一部返金しました。
相談の方法としては、メールやSNS・LINE相談が増えてきていますが、文字でのやりとりにはスキルが必要です。フリーダイヤルで、しかも夜間に相談できる機関は、全国でも稀で、他には無いのではないでしょうか。電話は意思疎通がタイムリーに行えるので、伝わったかどうかをその場でフォローできますが、文字では間違って伝わってしまうことも。メールフォームでの相談もありますが、電話相談に移行するようにしています。
また、イベント関係はほぼ中止になりました。さっぽろレインボープライドでのブース出展・パレード参加や、北海道医療大学の大学祭でのブース出展、世界エイズデー札幌実行委員会にも協力していましたが、中止・縮小となり、この間はイベントでの出展ができていません。
「居ない」のではなく、「居る」ことを想定した社会づくりが必要
― HIV/エイズへの取り組みの状況について教えてください
(沼田さん)私たちの活動、特に予防啓発は効果が見えません。検査数の推移が、私たちの活動による影響なのかどうかはわからないですよね。
私の場合、活動に参加するきっかけは、友人がHIV陽性をカミングアウトしてくれたことでした。私は当時学生で、研究室でレッドリボンさっぽろの活動を知り、参加しました。活動に参加して10年。日本の社会は、未だに「言える」ような状況ではありません。HIVが「特殊」と思っている人には、カミングアウトできませんよね。HIV陽性者は「居ない」のではなくて、「言えない」人が多いんです。もちろん、カミングアウトすることが正義・正しいことという訳ではありません。「言うこと」も「言わない」ことも尊重されることが大切だと思います。
医療はどんどん良くなっているのに、エイズやHIVへの偏見や差別は変わらないと感じます。社会が変わっていないことの虚しさを感じつつも、周りの人に助けられて、モチベーションを上げて、少しずつ、これからも一つ一つ取り組んでいきます。
(秋山さん)陽性者の間でも話題になるのが、病院を受診する時のことです。HIV拠点病院は、札幌だと北海道大学病院や札幌医科大学病院等のような大きな基幹病院となっていることが多いです。でも風邪を引いた時には、わざわざそんな大きな病院には行かないですよね。近所のクリニックなどを受診する際に、既往症としてHIVを書かなければならないんですが、みなさん、どうしていますか?ということが話題になります。
HIVの感染については、感染経路がはっきりしているのにも関わらず、過剰な予防策が時に見られます。『スタンダード・プリコーション』という、標準的な予防策で十分なのにも関わらず、防護服のような格好で対応されることもあります。医療者であっても、まだ偏見や正しい知識が無い方も居るのが、悲しいですね。病気を伝えるかどうかは個人の意思ですので、HIV陽性者が身近にいることを前提とした感染症対策をとっていただくとともに、HIVに感染していることを”わざわざ”伝えなくても良い社会にしていきたいです。
HIVを軸にいろんなことを考えられる機会を
― 今後の活動についてお聞かせください
(沼田さん)課題はやはり、マンパワーと資金です。助成金を申請するにしても、新たな事業を実施しつつ、事務作業が煩雑になってしまうというのがネックです。事務作業を担当してくれるスタッフが本当に必要です。
あとは、情報発信。会の活動報告も大切ですが、関わっている人たちが「楽しい」を伝えてくれると嬉しいです。札幌芸術の森で「キース・ヘリング展」が行われていますが、キース氏はエイズによる合併症で亡くなったんですよね。コロナ禍でアウトリーチする場が減ってしまいましたが、今後も、様々なことをきっかけに興味を持ってもらえるよう、多方面から積極的に発信していきたいと思っています。
(秋山さん)うーん、やはり支出を減らしたいです。インターネットの通信費、事務所家賃、電気代など見直して、人を集めるための資源にしたい。これまでは、現在のメンバーでなんとかしていかなければと考えていましたが、お金を人に投資することも必要です。イベント時のスタッフも、無給でお願いしていたのを、交通費と手当を出せるようにしたい。若い人にも伝えたいので、コロナ禍後には大学へも積極的に訪問したいです。
(沼田さん)「HIVを知っている・知らない」ということではなくて、性行動が活発な世代に対して、HIV/エイズのことを伝える必要があると思います。札幌市は10代の人工中絶率が全国平均の約2倍と高いんです(札幌市発行「How To Safer Sex」を参考)。これは、性感染症の感染リスクも高いとも言えます。HIVの予防啓発を進めることで、正しい避妊にもつながる場合もあります。どうやったら響くのか、関心持ってもらえるかは、まだまだ手探りですが、HIVを軸にいろんなことを考えられる機会を提供したいです。
また、若い世代は、検査で感染がわかることが多いですが、社会人になるとエイズを発症してからわかる方も少なくありません。
HIV感染症は、治療法が進歩したことで、ウィルス量をコントロールしながら長期療養できるようになり、コントロール可能な慢性疾患と考えられるようになってきています。HIVに感染しても、今まで通りの社会生活を送ることが可能なのですが、何度も言っていますが、間違った知識・情報による差別や偏見が未だにあります。そのためにも、企業での講演機会を増やしたく、募集はしていますが、現時点で依頼はありません。HIVに感染しても諦めない時代。社会で活躍する陽性者の方が多くなることによる新たな課題です。
インタビューを振り返って
HIVという言葉を聞く機会が減り、偏見は解消されつつあるのだと思い込んでいたので、「HIV陽性者は『居ない』のではなくて『言えない』人が多い」という言葉が印象に残りました。いまだ偏見が続いているからこそ、当事者に寄り添いながら、時代に合わせながら活動をしているレッドリボンさっぽろさんは必要不可欠な存在であり、活動を応援していきたいと強く思います。(定森)
インタビュアー
定森光(さだもりひかる)
北海道NPOサポートセンター
※インタビューは、2021年8月26日に行いました。
記事作成
佐藤綾乃(さとうあやの)
支援協議会事務局
[座談会企画]余市・札幌・夕張より~この1年半・これからといま(2)
新型コロナウイルス感染症の拡大とその対策のため、北海道内のNPO・市民活動も、「交流」や「集まること」への心理的なためらいや不安により、休業や自粛、良し悪しの判断すら難しい選択を迫られました。一方で、行政の支援施策や民間資金支援の対象は、緊急的な対策や、感染拡大を起因とする損害の回復を主たる目的とし、NPO・市民活動・地域活動の従来の活動への支援は多くはありません。
コロナウイルス感染症の拡大以前から、地域において必要とされている活動は、どのような岐路に立たされたのか。また、「活動をゼロにしない」ように、どのような工夫や試行錯誤があったのか。今回の座談会では、北海道内3ヶ所をつなぎ、『コロナ禍』と称されたこの1年半を振り返りつつ、活動の状況などを伺いました。皆さんの地域での活動の参考や、新たなネットワークづくりのきっかけになることを期待します。
※この企画は2021年7月7日に開催しました。2回に渡って記事を掲載します。
右写真:夕張こども食堂の様子。夕張メロンも見えます(一般社団法人清水沢プロジェクト)
スピーカーの皆さん
◆坂本純科(さかもとじゅんか)さん
◆平井照枝(ひらいてるえ)さん
◆佐藤真奈美(さとうまなみ)さん
◆進行 北海道内中間支援組織コロナアクション 定森光(さだもりひかる)NPO法人北海道NPOサポートセンター
活動地域との関係で意識すること
ー それぞれ、地域との関係性に特色があるように見えますが、意識することはありますか。地域との関係性をどのように築いてきたのか教えてください。(コロナアクション成田)
坂本:余市は農村地帯で周囲はほぼすべて農家。農家ではない私たちが農地を借りて農業をしていくこと自体が、近隣から注目されてきたと感じています。
エコロジー重視の無農薬農業は従来農業と考え方が違い、虫や病気も実際に出してしまいますが、地元とトラブルにならないようにということは肝に命じながらやっています。私たちの方が後から来た立場であり、活動を支えてくれるたくさんの方のためにも、対立をしないように心掛けています。
学生やボランティアが近隣の手伝いや地域の行事に出たり、除雪をしたり、若者たちが頑張って外に出て働いてきたことで「へんなやつだけど悪いやつらじゃない」という認識を持っていただいています。最初の入り口は厳しい目で見られても、仲間だと思ってもらえたらものすごく親切にしてくれて、今につながっている。
まずは近所の方の理解と信頼を得て、味方になってもらえたことが、農協や地域のメインストリームの方の理解につながったと感じています。大学の先生の協力や公共の補助金をたくさん取ったとしても、そのような信頼は得られなかったのではないかと。「急がば回れ」で、身近な方に理解してもらったことが良かったと思います。
佐藤:清水沢では、観光・交流と言ってはいますが、地域にとっては人が来ればいいというものでもないと思っています。コロナに関わらず、もともとなんでも受け入れられるような余裕は、この地域にはありません。
清水沢コミュニティゲートという施設は、アーティストなどの外の人が最初に入っていく「ゲート(門)」ですが、「むやみに人を入れない」「へんな人を入れない」という「門番」としての役割もはたしています。具体的には、わっと来てわっと去っていくような、マスツーリストは避けています。清水沢は生活の場であり、たくさんお客様が来てほしいわけではない。「お客様は神様」ではなく、仲間になってくれる人に来ていただきたい。
また、メディアにも注意しています。夕張は財政破綻で注目を浴び、住民はこれまでメディアなどに尊厳を踏みにじられてきたと感じます。「廃墟のまち」など言いたい放題、興味本位にネット発信をするような個人の方もいます。私たちも、結果的にそのような報道に協力してしまったこともあり、その反省の上で、どういうふうに地域を守りながら活動するか試行錯誤しています。最低限、地域の方に不安を与えないことを大前提に活動をしていきたいと思います。
アーティスト・イン・レジデンスで滞在したドイツ在住のアーティスト菊池史子さん(左からお二人目)と
清水沢コミュニティゲートのスタッフ
ー 地域との関わりは地域性が大事で、それぞれの地域で異なること、また関わり方を模索しながら活動をしなければならないことが分かりました。札幌で活動していると「地域が見えない」と感じることがあります。札幌で活動している平井さんは、「地域」との関わりをどう捉えてどう感じているでしょうか?
平井:地域のみなさんと関わりを持って、というのは難しいかな、と感じています。もちろん活動のすべてを自分たちだけではできないので、学習支援の「Kacotam」さん、DVや心のケアは「holoholo」さん、グリーフケアの「sachi」さんなど他の団体と連携してきました。
「子育てサロン」や地域で子育て支援をしている団体とは、主に平日日中の開催ということもあり、つながりがこれまであまりなかったのですが、お話をする機会をいただいたりして、これからもつながりを作りたいと思っています。
また、コロナ前には全く関わりがなかった飲食店などが「大変って聞いたから」と協力してくれ、新しいつながりが出来ました。
札幌以外の団体では、釧路・旭川・函館などの困窮者支援や千歳・苫小牧などのフードバンクの団体などとつながりができました。会員さんには、みなさんを応援してくれる方がたくさんいますよ、とメッセージをいれて食糧支援を送っています。会ったこともない人とつながれたことが嬉しい、という声も聞きます。
全道各地にいる会員さんが、それぞれの地域の支援団体とのつながりができれば、より安心感があると思います。いまは、稚内や北見などの情報が欲しいです。
コロナ禍支援でできること
坂本:食糧支援についてはどのようなものを求めているのでしょうか?
平井:基本的には米や調味料、おやつなど、日持ちするもの。賞味期限が1カ月以上残っているもの。根菜を提供いただき配布したこともあるが、保存ができるものがいいですね。
お寺のお供えを提供する全国組織の「おてらおやつクラブ」には多くの支援をいただいています。お供えのお裾分けではなく、お寺さんや檀家さんが私たちの希望を聞いて買っていただいて「お供え」をしてから、それを支援していただくこともあります。
ひとり親家庭は、家族のつながりが薄く、荷物が届いた経験がない子どももいるんです。食糧支援の荷物が届くと「本当にうちに来たの?開けていいの?」と何度も確認し、「サンタさんが来た!」というような喜びようで、おやつなどが入っていると、さらに喜んでくれます。
野菜などは対面で状態を確認してもらいながら、であれば渡せますが、配送すると届いた時に傷んでいる可能性があり、送ることができません。開けたときに、傷んだもの、賞味期限が切れているものなどが入っていたら、受け取った方はどう思うか…。「自分たちを大切に思ってくれている」と感じてほしいので、そこは気を付けています。
0円マーケットと称して、対面で食料などを配布するイベントも行っているので、タイミングが合えばその時に野菜なども提供してもらえると、とても嬉しいです。
坂本:農村では野菜や果物のハネ品がたくさんあるんですが、なかなか提供のタイミングが会わないですね。災害支援などでもそうですが…。一方では廃棄し、一方では必要とされているので、いたましい。
ー 支援したいという人はたくさんいると思うが、どのような物資があって、いつどこに持っていけばいいのか、どのようなやりとりをすればいいのか。情報交換ができるルートを作っておきたいですね。(コロナアクション宮本)
坂本:災害支援でも、使えないモノをたくさん送ってしまう方などがいます。倉庫も必要だし、上手に物品をオーガナイズできるところもあれば、難しいところもありますね。
平井:古古米なども、食べれば食べられるのですが、賞味期限を大幅に過ぎたものを送られたら傷つく人もいるのではないかと思います。前もって「そういうものでもよければ」と希望を聞き、送ることができればよいのですが、なかなかそこまでできる余裕がありません。
ー 対面で確認しながらであればお渡しすることもできるのであれば、渡し方の工夫ができるといいですね。(コロナアクション成田)
ブックサンタの本を会員のボランティアさんたちと発送作業をする
中間支援に期待すること
ー 最後に、今後の展望についてや、私たちのような中間支援に期待することなどがあればお聞きしたいです。この1年半、もっとこうしてほしかったな、という事があれば今後につなげたいと思います。
坂本:私たちの団体も、地域の中では、情報のマッチングなど中間支援的な役割があるのかもしれません。平井さんのおっしゃるように、情報とモノの届け方に課題がある。今の世界の状況は、情報などが行き届いてなくて分断されていると感じるので、サポートしていきたい。
いま団体には、教育旅行のリクエストを多くいただいています。ショッピングやアトラクションだけではなく、学習系プログラムが望まれていて、充実させたいと思っています。余市だけでは300人という数を受け入れできませんが、海や森の産業や環境系、福祉系の活動などにも受け入れをしてもらって、研修を育てたいです。
「農業体験」となるとエコビレッジでしか提供できませんが、「SDGs」となると地域の一次産業や福祉系など対象になり、ひろがっていきます。
SDGsを意識し、様々な主体と、単純に仲良くしましょうではなく、それぞれが「得」と感じられるハッピーなつながりを作っていきたいです。
平井:日々、ひとり親の切実な声が届いています。情報が行き届いていない、ということも切実に感じます。支援策はさまざまあるが、情報が一人一人に届いていません。
「一緒に申請書を書きましょう」という講座をしたいです。例えば、課税・非課税世帯など、自分がどこに当てはまるかどうかもなかなか分からないし。そこまでフォローしていかないと、せっかくの支援策、制度が使われません。
コロナ禍の当初は、10万円の給付金をそのまま寄附してくださる方もいて、びっくりするほど寄附をいただきました。今は激減してしまったけれども、ひとり親を取り巻く環境はより厳しくなっていて、改めて寄附の呼びかけや連携も必要だと思っています。
私たちの活動は食糧支援がメインではありませんが、今は緊急的にどうしても必要と感じています。フードバンクなど道内各地の支援団体の情報も集め、ひとり親家庭だけでなく、学生さんや高齢のかたにも支援が行き届けばいいなと思います。そういう点では私たちも中間支援の役割を持っています。
中間支援のみなさんには情報の提供、特に各地の支援情報の提供をいただければ助かるな、と思います。
佐藤:みなさんと同じように、私たちも外と地域をつなぐ中間支援の面があります。
拠点の「清水沢コミュニティゲート」はもともと「家」だったこともあり、イベントは食べ物を持ち寄って行うのが定番でしたが、コロナ禍ではできないのが残念です。高齢者はだんだん亡くなってしまっていく。コロナ前の焼肉パーティーでお会いしたのが最後だった、という方も。
夕張の歴史や誇りを次の世代に引き継ぐ活動に力を入れたいと思い、子ども・子育て支援を目的とした地域おこし協力隊を受け入れて、学校や園の行事への関わりなどをしはじめたところです。
人口が7,100人台と最盛期の16分の1となった夕張は、縮小の最先端にいます。担い手が少なくなったこの地域にとって、便利屋的に使ってもらえればいいなと思います。
中間支援の方から提供される助成金情報や、組織運営などの情報発信が実際に役に立つこともありましたので、これからもいろいろな情報を出してもらえれば助かります。
ー本日は長時間、お話をいただきありがとうございました。
北海道内中間支援組織コロナアクションって?
コロナ禍により市民活動が停滞することないように、また新たな課題にも対応できるように、北海道内の中間支援組織が連携した広域ネットワークを創り、現場で活動しているNPOを支えていくことを目的とした北海道内の中間支援組織の有志によるネットワーク体です。
私たちは、ひとりでも多くの方に、必要とされる支援を届けられる仕組みづくりを、一緒に考え構築し、ポストコロナを見据えた「コロナアクション」を実行していきます。市民活動は不要不急ではありません。
COVID-19の感染拡大により様々な影響が引き起こされているコロナ禍において、私たちは不要不急の外出を控え、様々な事柄にも自粛を求められてきました。しかし、必要な市民活動が停滞することないように、また新たな課題にも対応できるように、2020年4月24日から毎月1回、北海道内の中間支援組織の有志はオンラインで相談を重ねながら様々な活動を行ってきました。これまでの私たちの活動をご紹介します。
参加団体
NPO法人北海道NPOサポートセンター(幹事団体) 、NPO法人旭川NPOサポートセンター、NPO法人北見NPOサポートセンター、NPO法人NPOサポートはこだて、NPO法人北海道市民環境ネットワーク、ひがし北海道市民防災サポート、NPO法人室蘭NPO支援センター
北海道内のNPO等を対象としたアンケートを実施しました。
〈第1回〉新型コロナウィルス感染症拡⼤に関するNPO 等団体への緊急アンケート(回答 期間︓4/24〜5/15)
(北海道NPOサポートセンターHP)
〈第2回〉新型コロナウィルス感染症拡⼤に関するNPO 等団体への緊急アンケート(回答 期間︓7/22〜8/14)
(北海道NPOサポートセンターHP)
ワクチン接種が進む中、3回目の緊急メッセージを発信しました(2021年8月11日)
新型コロナウイルス感染症流行下における北海道の市民活動の継続に向けた緊急メッセージ
(北海道NPOサポートセンターHP)
記事作成
三木真由美(みきまゆみ)
NPO法人室蘭NPO支援センター