団体からのお知らせ・インタビュー

2021 / 10 / 28  14:23

[座談会企画]余市・札幌・夕張より~この1年半・これからといま(1)

[座談会企画]余市・札幌・夕張より~この1年半・これからといま(1)

新型コロナウイルス感染症の拡大とその対策のため、北海道内のNPO・市民活動も、「交流」や「集まること」への心理的なためらいや不安により、休業や自粛、良し悪しの判断すら難しい選択を迫られました。一方で、行政の支援施策や民間資金支援の対象は、緊急的な対策や、感染拡大を起因とする損害の回復を主たる目的とし、NPO・市民活動・地域活動の従来の活動への支援は多くはありません。

コロナウイルス感染症の拡大以前から、地域において必要とされている活動は、どのような岐路に立たされたのか。また、「活動をゼロにしない」ように、どのような工夫や試行錯誤があったのか。今回の座談会では、北海道内3ヶ所をつなぎ、『コロナ禍』と称されたこの1年半を振り返りつつ、活動の状況などを伺いました。皆さんの地域での活動の参考や、新たなネットワークづくりのきっかけになることを期待します。

※この企画は2021年7月7日に開催しました。2回に渡って記事を掲載します。

右写真:大阪の高校生が港で漁業を学ぶ研修の様子(NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト)

 

btn_01project2.gifスピーカーの皆さん

 

◆坂本純科(さかもとじゅんか)さん   

余市 NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト
        

平井照枝(ひらいてるえ)さん 

札幌 しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道

 

佐藤真奈美(さとうまなみ)さん  

夕張 一般社団法人清水沢プロジェクト    

 

◆進行 北海道内中間支援組織コロナアクション 定森光(さだもりひかる)NPO法人北海道NPOサポートセンター

 

btn_01project2.gif団体&自己紹介 

― まず、皆さんの活動について教えて下さい

坂本:余市で「持続可能な暮らしと社会」(=エコビレッジ)」を創造するための技術や考え方を学び広める活動をしています。2009年に長沼で立ち上げ、2011年の東日本大震災をきっかけに余市に拠点を移しました。農業体験、宿泊体験などをボランティア中心に運営しています。
10年の活動を経て、最初はNPOでは農地も借りられなかったのですが、現在は農協や役場なども協力してくれたり、地域に頼られる存在になってきたと思います。神社の草刈りやお祭りなど地域の活動にも積極的に関わっています。


平井:ひとり親の支援を行っています。2008年に立ち上げ、14年目。NPO法人にしようと思いながら、任意団体で続けています。ひとり親がお互いにサポートし合う活動や、支援者向けセミナーなどを行っていました。
コロナ禍前は30名から50名程度だった会員が、2019年度に140人、今は700名を超えるまで増えています。現在は緊急的な支援のため、相談を受けて食料を送るフードバンク活動がメインとなっています。ひとり親はコロナ禍でますます厳しい状況。シングルマザーサポート団体全国協議会を作って、現状調査などを行い、中央省庁への働きかけなども行っています。

佐藤:2008年から「炭鉱遺産を活用したまちづくり」をテーマに、夕張中心部の清水沢地区に関わり、2016年に非営利型一般社団法人を設立しました。外の人と中の人がお互い尊敬しあいながら共に歩むまちづくりを目指して、旧北炭清水沢火力発電所のガイドツアーなど炭鉱遺産にアクセスできる仕組みを作り、エコミュージアム事業などを行っています。元炭鉱住宅を「清水沢コミュニティゲート」として活用し、みんなの拠り所であるとともに、外部からこの地域にやってくる人のゲート(入り口であり門番)として、生活の場である静かな地域を守りながら未来に渡していくために活動しています。

 

 

 btn_01project2.gifコロナ禍の影響や新しい取り組みについて

― まず坂本さん、コロナ禍で活動にどのような影響を受けたか、また、どのような取り組みをしていたかを教えてください。 

坂本:農業体験やゲストハウス運営を行っていて、例年、住み込みのフルタイムボランティアが世界中から年間延べ500~600名参加します。7割が外国人でした。コロナで外国人の方が来られなくなり普段の賑わいはなくなりました。
その代わり、日本人で仕事を失った人や、学校にいけない学生、オンラインで仕事をしながらという方のボランティアが多くなりました。また、これまで遊びに来る「お客様」だったNPOの会員が、進んで畑作業や事務仕事を手伝ってくれるようにもなりました。市民活動としては、プラスに働いたところもあったと思います。

収益の柱だった企業研修、教育旅行などの体験、宿泊の受け入れが出来ず、収入は3分の1~4分の1程度と、がつんと減りました。
「農園で作った野菜があるじゃないか」と、札幌で出張販売してみましたが、収益にはつながりません。1個40円の卵を売るより、一人の会員さんに会費を払ってもらう方が利益率が高い。販売は、私たちのことを知ってもらい会員を獲得するPRの場にはなりましたが、改めて、私たちの活動は物販ではなく、モノではなくコトを売るのだと気付きました。つまり、「プロセスを楽しむことを売り物にする」、「体験にお金を払ってもらう」という線を今後も崩さないでいこう、ということを確認できたのは良かったです。

また収益はなくても、地域の方の差し入れや物々交換ができてお金に頼らなくて済む関係性があり、普段食べるものは充実して、仲間が周りにいたので「私たちは絶望はしないんだ」と、そこは自信をもつことができました。

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自家製ブドウでワインづくり

 

ー むしろ団体の価値を再確認できた、地域の方や会員とのつながりが強固になった、ということですね。

坂本:これまでの活動の積み重ねで「つながり」ができており、大学生などがボランティアに参加してくれました。いつもは反応がないような層の大学生も「制限される日常から、とにかく脱出したい!」という気持ちがあったように思います。

また、10年積み重ねてきた関係性で、近隣の方の理解も得ていたため、このような状況でも地域外の人を受け入れることができたと感じています。類似の活動をしている他地域の団体では、地域外の方の受け入れに批判があったり講座の開催ができなかったりしたところもあったようなので、地域との関係性がすごく大事だなと思っています。

[座談会企画]余市・札幌・夕張より~この1年半・これからといま(1)
地元の高校生と農作業

 

ー 続いて平井さん、シングルマザーの状況を含めて、コロナ禍での活動について教えてください。

平井:ひとり親の就労率は80%と、ほとんどが働いているのに、貧困率は49%となっています。
男女の格差、結婚では仕事はやめないけれども出産で退職せざるをえない、その後、正規雇用で働けない、子どもがいることによってさらに働きづらい、という、以前からある女性の働き方を取り巻く問題が影響しています。

貯金が10万円未満の世帯は45%、貯えする余裕もない中で「一斉休校が3カ月もあり仕事を休まざるを得なかった」、「非正規であるため休業補償を受けられない、しかも家庭の水道光熱費は増える」、と大変厳しい状況です。
長年相談を受けていますが、「まさかここまで、食べ物にも困るひとり親が、こんなに多くいるとは…」と怖さ、悲しさ、虚しさを感じました。

去年5月のアンケートで既に「1日3食、食べられない」という回答がありました。小学生の子どもの体重が減った、という回答が10%を超えていて、ショックをうけました。育ち盛りの子どもの体重が減る、つまり食事をとることが出来ていない。この国でそういう状況になっていることが本当に切ない。アンケート回答者は多少なりとも食料支援を受けていてもこの状況なので、支援につながっていない世帯はもっと大変だろうと思います。
このようなアンケートをもとに、行政などへの働きかけを行い、臨時特別給付金など様々な給付金につながってはいますが、結局は、滞納していた家賃や公共料金、削ることの出来ない校納費の支払いに消えており、生活の改善までには至っていません。継続した経済的支援が必要だと思っています。

メルマガで毎回、緊急小口資金のお知らせもしていますが、実際の利用にはつながっていません。非課税世帯なら返済が免除されること、自分が使える制度ということが伝わっていないのです。
なので、食料支援の際に対面で相談を受けて、制度についての説明と申請書を渡して書き方を伝えます。 そもそも、申請に必要な添付書類の取り方や、申請書を送る「長3や角2」の封筒と言われも分からない方もいるので、そこまでしてやっと申請ができるのです。
でも、苦労して作った申請書類を窓口に持って行ったら「コロナで退職したのではないのでしょう」「休業中なのに、あとで返せるの」など、職員の無理解に傷ついたという方もおり「申請は郵送で」と呼びかけています。

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食品支援の発送と同封の資料

 

ーひとり親の大変な状況が、良く分かりました。全国的な取り組みとして以上のようなことをされていると思いますが、団体としての活動は、他にどのようなことをされていますか。

平井:コロナ前は、シングルマザー同士が交流する場づくりを重視していました。団体の拠点がないので、緊急事態宣言のため公共施設が使えず、場づくりもできなくなりました。食糧支援も公共施設が使えず場所探しには苦労しました。

その代わり、レストランなどが協力してくれることもあり、新しいつながりが生まれたのは良かったと思います。父子家庭の飲食店経営者からお弁当を買い、それを困窮者に配布してもらう取り組みもできました。

土日にオンラインママカフェなども行ってみましたが、参加が少ないです。ひとり親は土日も勤務していたり、子どもが在宅していて参加しづらいのではないかと感じます。つらい気持ちを吐き出す場がなく、精神面も、とても心配しています。

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ひとり親応援弁当&食品配布の様子

 

― 続いて佐藤さん、コロナ禍の影響を教えてください。

佐藤:私たちの事業の柱の一つに「アーティスト・イン・レジデンス」(芸術家の滞在型創作活動支援)があり、芸術家の方と深いつながりがあります。コロナの流行初期に当地で活動していたドイツ在住のアーティストは、地域の方にお話を聞いたりしながらの作品作りは計画通りにいったものの、2カ月間足止めされてドイツに帰れなくなるなど、アーティストにとっても厳しい環境となっています。

団体としては、持続化給付金やJ-coin基金の助成、国の臨時交付金事業で行われた夕張市の受託事業等、資金繰りで助けられた面もあり、複雑な思いです。

2017年から開催していた「夕張こども食堂」は、貧困対策ではなく、炭鉱住宅らしい原風景を感じてほしいという思いで行っていました。9畳の部屋に10人以上入るような密な状況だったので、現在は開催する事が出来ません。一度、屋外で予約制、保護者同伴などの条件を付けて開催してみましたが、参加者の子どもから「こんなのつまんない」と言われました(笑)。

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夕張のこども食堂には夕張メロンが出てきます

 

旧清水沢火力発電所の見学も、道外からの申し込みは断りました。坂本さんのお話の状況とは逆になりますが、何人かの方から「地域外ナンバーの車がたくさん来るのは不安」という声もいただき、地域住民が不安に思うことは避けたいと思いました。結果的に来場者が6割減。ただ、道内の方の見学者数はほとんど減らず、いちばん地域の歴史をお伝えしたい道内の方に、身近な地域の歴史に目を向けていただく機会は提供できたと思います。

旧火力発電所にはコスプレさん(アニメの登場人物などの姿での撮影)がよく来ていたのですが、これまでの利用者にアンケートをとり、場所的な余裕をとったり、受付を外にしたり外部からも対策が見えるようにし、受け入れを継続しました。

アーティスト・イン・レジデンスでの滞在希望者は年に5~6件来ていました。健康であることを確認できれば断る理由がないと思い、2週間の隔離をした上で地域に入ってもらうなどを条件に、2020年は2組を受け入れました。毎年継続して来ている常連アーティストの「シニア・フォトキャラバン(地域の高齢者に地域の話などを伺いながら写真を撮影)」と、夕張出身の大学生の卒業制作でした。特に大学生は勉強しないといけない、卒業しないといけない。彼らにどう寄り添うかも考えました。

芸術という、人の生き死にには直接関わってこないことの受け入れには賛否両論あると思いますが、健康状態をしっかり確認することで、地域の安心を確保しながら地域の一員として活動していただく状況を作っていきたいと思います。

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旧北炭清水沢火力発電所

 

ー(2)に続きます。

座談会記事(2)は  btn_kotira4.gif
 

 

btn_01project2.gif北海道内中間支援組織コロナアクションって?

コロナ禍により市民活動が停滞することないように、また新たな課題にも対応できるように、北海道内の中間支援組織が連携した広域ネットワークを創り、現場で活動しているNPOを支えていくことを目的とした北海道内の中間支援組織の有志によるネットワーク体です。
私たちは、ひとりでも多くの方に、必要とされる支援を届けられる仕組みづくりを、一緒に考え構築し、ポストコロナを見据えた「コロナアクション」を実行していきます。市民活動は不要不急ではありません。

 

記事作成
三木真由美(みきまゆみ)
NPO法人室蘭NPO支援センター

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