団体からのお知らせ・インタビュー

2022 / 02 / 07  13:23

[インタビュー]ひきこもりの循環型共生社会を実現できるように~レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク 田中さん

[インタビュー]ひきこもりの循環型共生社会を実現できるように~レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク 田中さん

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク
長期在宅ひきこもり世帯の家族関係対話修復事業
(令和3年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 ひまわりピアサポート基金助成事業)

 

ひきこもりの長期化に伴う高齢化という問題の背景には、親子の対話が無い、意見のすれ違いからの対立など、家族関係の問題があるという指摘があります。
1999年の発足以来、外出が難しく、一般就労が困難なひきこもり者とその家族等に対し、手紙・メールによる相談や、出張相談などを行っているNPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワークを取材しました。

今回は、理事長田中敦たなかあつし)さんに、オンラインでお話を伺いました。

 

 

btn_01project2.gif『ピア・アウトリーチ』という活動

― まず、レター・ポスト・フレンド相談ネットワークの活動について教えてください

1999年9月1日に発足し、2010年3月にNPO法人化しました。22年の歴史があります。団体の名称の通り、私たちは「手紙」を使った活動をするところから始まりました。どうしても、ひきこもりや在宅状態が長い人たちと接点を持つチャンネルは、電話や対面では難しい側面があります。双方が無理のない形で接点を持つにはどうしたら良いかと考え、似たような引きこもり経験のある人たちが繋がり、支え合える取り組みとして、手紙を使った『ピア・アウトリーチ』という活動を行っています。

2007年度から外出が可能になった35歳前後の当事者を対象に、居場所支援という形で、当事者グループ『SANGOの会』という自由に集まれる活動を行っています。ただコロナ禍では、緊急事態宣言等で公共施設が使えないなど制限がある中で、居場所活動を続けるのは非常に苦労が多いです。現在は「オンラインSANGOの会」「よりどころオンライン当事者会/親の会」という形で定期的に開催し、できるだけ途切れないように活動しています。オンラインが使えない方へは手紙をお送りしています。デジタルとアナログをうまく併用して、コロナ禍では活動しています。

 

 

 btn_01project2.gifひきこもり親子公開対論

― 今回の助成事業について教えてください

さぽーとほっと基金の助成金は、毎年度活用しています。当事者たちは収入がほとんど無く、道外・市外へ出る機会が無いので、私たちのNPOでは、本州の当事者や、なかなか会えないような方を招いて交流できるよう、イベントを行う形で助成金を活用してきました。

今年度は前年度に引き続き、ひきこもりの背景にある「親子関係の根深さ」に焦点をあてています。問題の根幹には、親子関係があるケースが多いです。ご家族も、本人の気持ちがわからない、何を考えているのか理解出来ない。当事者も同じように、親にわかってもらえない、理解してもらえない、家庭内に居場所を作れないという形で苦しんでいる方が多いです。

そのため、親子関係に着眼した『対話修復』を図っていく事業として、「ひきこもり親子公開対論」を、8月21日(土)に開催しました。運良く会場を使うことができ、講師も東京から当事者をお呼びして、26名の参加者を得て開催することができました。

概要としては、前段、親子公開対論について講師からの説明してもらい、後半は講師が当事者役や家族役になり、ロールプレイの形で、当事者と家族のクロストークができるようなセッションを行いました。多くの気づきを得られ、真正面から親子関係を捉えた事業は、これまでになかったのではという意見もあり、参加者からは好評の声を得られました。本当はもっと多くの参加者と、本格的な親子対論のディスカッションができればよかったのですが、やはり三密を回避できるよう、様々な配慮が必要になったために定員は少なくなりましたが、なんとか開催することができました。

やはり家族の方が、参加者の前で自分の悩みを赤裸々に語るということで、人選は難航しましたが、実際対論を行っていく中で、自身の体験を語りだす方も居ました。ファシリテーターを担った当事者講師の配慮や進行に助けられたということもあったと思います。

親子公開対論そのものは、今回来ていただいた講師が、関東を中心として幅広くやっていて、ノウハウを持った方でした。北海道でも親子関係に悩んでいる方が非常に多いので、開いてみる必要性があると考え依頼したところ、快く引き受けてくれました。本当に渦中にいる親子が来て対論するのではなく、あらかじめ人選した当事者と家族が1名ずつ登壇して、相手役は講師が担うという形で行いました。日頃思っていることを、当事者や家族が話し、それぞれがどんな風に思っていたのか、自分を映し出す鏡のような機会になります。

関東では、東京や千葉、首都圏といった開催していると伺っていて、今まで気づかなかったことに気付かされるという声が多いようです。今回の参加者は、当事者とご家族が中心で、支援者はお一人だけ参加されていました。コロナ禍の影響もあって、医療・福祉に携わる支援者の方々は参加を控えられたのではないでしょうか。今後の開催については、少し形を変えるなど工夫をして、家族会の運営の中での実施を考えています。

 

btn_01project2.gifひとつひとつ見ていくと、細かな影響がたくさん

― コロナ禍において、活動やひきこもりの方たちへの影響はいかがでしょうか?

まず居場所活動に影響が出ました。会場が使えないため、オンラインに切り替えて実施をしてきました。コロナ禍以前は、和室を使ったり、飲み物やお菓子を出したりしていましたが、それもまったくできなくなりましたね。また、わたしたちの活動は誰が来ても、いつ来て帰っても良い、事前予約も不要にして、敷居をものすごく低くしていました。名簿も一切取っていなかったため、ぱったりと来れなくなってしまい、音信不通になってしまった当事者や家族がかなりいる状況です。連絡のしようがなく、電話番号もどこに住んでいるのかもわからないため、これがいちばんの気がかりです。

ひきこもり、元々在宅生活を長期に渡って行っている方が多いので、本人にとっては生活様式が大きく変わったということは無いですが、自分だけでなく家族みんながステイホームになったことで、家族関係がうまく行っていない家庭では、ちょっとしたことで口論や対立が起きてしまい、家庭内の居場所が持てない、無くなってしまうという当事者が出てきていることも大きな課題です。

イベントなどで用事や居場所があるから外出していた当事者も多かったですし、図書館などの施設も閉鎖になり、行き場所が無くなって、夜眠れなくなるなど、日常の生活に細かな影響が出てきている人もいます。

また、元気になってアルバイトを始める方も多かったですが、強迫神経症の方などは、「自分が感染するんじゃないか」という恐怖から『コロナ恐怖症』になってしまい、アルバイトをやめざるを得なかったり、完全に連絡が取れなくなってしまったり、ひきこもりに逆戻りしてしまう人も出てきています。このように、ひとつひとつ見ていくと、細かなコロナ禍における影響がたくさん出てきていることを感じます。

― オンラインでの活動について教えて下さい。

オンラインの居場所へは、以前から活動に参加していてインターネット環境のある人がメインになっています。そういう方々は繋がっていますが、利用できない方も多いです。特に50~60代の中高年層はネット環境が無い方も多く、これまで紙媒体の広報物を見て参加していた方たちについては、完全にお手上げなんですよね。連絡先がわからないため、お知らせができず、完全に途切れてしまっています。

オンラインで参加されている方たちの間でも、実際に会いたいね、という声は最近顕著になってきています。あらゆるものがオンラインになってしまって、やはりオンラインは疲れる、実際に会うことの良さが、オンラインが長期化される中で、再認識されている気がします。

そのような中ですが、会場の問題は、どうしようもない課題ですよね。私たちの活動は、札幌市からの委託事業で行っているので、自分たちで会場を確保できたとしても、行政の指示に従わずに対面で実施するのは難しいです。緊急事態宣言中はもちろん、まん延防止措置期間もすべて解除されない限り、いかなる方法をとっても対面での開催は難しいです。

手紙は、むしろニーズがあって、コンスタントに相談が来ています。メール相談もコロナ以前より2倍ぐらいに増えています。逆に、電話相談の割合は少なくなっています。家族に話が聞こえてしまうので、電話は掛けづらいのかもしれないですね。オンラインであっても自宅で行うと、イヤホンをしていても、自分の声はどうしても家族に聞こえてしまいます。場合によっては、家族が部屋に入ってきて、映像に写ってしまう可能性もあるので、ビデオオフにして参加しなければならないなど、オンラインも難しい方がいらっしゃいます。

相談内容の変化としては、1番は体調不良、健康面での不安という相談が増えました。2番めは収入面です。アルバイト収入が減ってしまうなど、コロナが長期化することによって、世帯そのものの収入が減り、お金の不安についての声が多くなっています。

 

btn_01project2.gifピアスタッフは専門職

― 運営上の課題はありますか?

現在、収入の中心は委託事業と助成金です。寄付金は、認定NPO法人格を取得するまでには至らない程度です。ひきこもりの当事者は、お金を持っていない人が多く、私たちはそういう人達からお金を取るということは基本的にはしていません。NPO法人は会員制で会費収入もありますが、会費を払えない人の方が圧倒的に多いです。会員でなければ利用できないというような差別化はせず、誰でも参加できる形にしています。そのため、参加者に対して会員は少なく40名ほど、寄付金収入は年間25~30万円弱という、弱小団体なんです。

団体の運営に関しては、得手不得手があると思いますが、NPOは結構細かな事務処理がありますよね。当事者団体は、得てして事務処理が苦手なところが多いのかなと思います。当事者団体を運営していくにあたっての事務処理課題をどうクリアしていくか、中長期的な展望として課題感があります。当事者ではない者が担った方が良いのかどうかも含めて検討してくことも大事ですね。北海道NPOサポートセンターで、当事者団体における事務処理の研修なんてどうでしょうか?そういうのを企画していただけたら、参加したいという当事者もいるのではないかなと思います。

― 今後の活動についてお聞かせください

私たちは当事者団体なので、過去に不登校やひきこもりの経験があり、運営を担っている人たちは、ピアスタッフという形で活動しています。できるだけ当事者のニーズにあった事業を展開していくことが何よりも大事です。また当事者であっても、ずっとボランティアで活動に携わり続けることは、非常に辛いです。ピアスタッフへは実働に対する正当な対価としてのお金がまわっていく、そのことが社会に戻っていくことにも繋がります。NPOとしても、ひきこもりの循環型共生社会を実現できるように、働きかけや事業展開をしていくことが大事だと思っています。現在は、委託事業で居場所活動などを行っていますが、できるだけピアスタッフへは、実働に見合うお金が渡せるようにしたいと考えています。現状ではまだ難しいですが、生活が少し安定できるぐらいの形にしたいと思っています。

どうもNPOはお金を稼いではいけない、ボランティアじゃないと、という意識やイメージが強いですよね。まわりのひとも、当事者なんだからボランティアでいいんじゃない、という見方がまったく無いというわけではないです。ピアスタッフは専門職であって、重要な役割を果たしていますし、ひきこもり体験をもっているピアスタッフによる支援が良いという声も、実際に利用している方から聞こえてきます。彼らを専門職と同格としてみて、それに見合うお金が循環する形にしてもらいたいなと思っています。

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インタビューを振り返って

 「決して押しつけないが静かに返信を待つ」一種独特な、手紙を使ったピア・アウトリーチの手法は、当事者の状況を理解に基づくものだと感じました。20年以上の歴史がありながら、コロナ禍への対応や今回の助成事業のように親子公開対論のような新しい手法を導入するなど、時代に合わせた活動を続けてらっしゃることにも学ぶべきことが多いと思いました。(高山)

 

インタビュアー 
高山大祐(たかやまだいすけ)
北海道NPOファンド
※インタビューは、2021年9月9日に行いました。

 

記事作成
佐藤綾乃(さとうあやの)
支援協議会事務局

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2022 / 02 / 06  15:40

2020年度 さぽーとほっと基金・新型コロナウイルス感染症対策市民活動基金の活動報告を掲載しました

2020年度 さぽーとほっと基金・新型コロナウイルス感染症対策市民活動基金の活動報告を掲載しました

 さぽーとほっと基金・新型コロナウイルス感染症対策市民活動基金

さぽーとほっと基金は、札幌市が募集し、町内会・ボランティア団体・NPOなどが行うまちづくり活動に助成することで、札幌のまちづくり活動を支える制度です。

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新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、札幌市内でも様々な分野で危機的な状況が続いていますが、市内には、感染症リスク低減対策を実施しつつ、新型コロナウイルス感染症対策に関する活動を行っている、または実施を検討している市民まちづくり活動団体があります。
 
新型コロナウイルス感染症対策市民活動基金は、こうした活動を応援することによって、新型コロナウイルス感染症による影響を受けた方々を支援するため、また、札幌市の市民まちづくり活動を今後も活性化させるため、「さぽーとほっと基金」内に設けている基金です。

2020年度に助成を行った団体は、29団体。助成合計額は3,000万円となりました。

下記のプロジェクトページにおいて、活動報告を掲載しましたので、ぜひご覧ください。

 

 

 

2022 / 02 / 02  14:05

[お役立ち情報]学級閉鎖等が急増!小学校休業等対応助成金について

[お役立ち情報]学級閉鎖等が急増!小学校休業等対応助成金について

急速な感染拡大により、道内各地で、学級閉鎖、学年閉鎖、学校閉鎖が急増しています。

2月1日の道教委発表によると、合計591校。この数は、全学校の3割にあたり、「第4波」「第5波」に見舞われた昨年4~8月の学級閉鎖等の数(計413校)を約1ヶ月で昨年のピーク時を上回りました。

新型コロナウイルス感染症による学級閉鎖等により、子どもの世話を保護者として行うことが必要となった方に対する助成金があります。
ぜひ、内容を確認いただき、活用ください!

 

◆小学校休業等対応助成金(雇用者向け)

令和3年8月1日から令和4年3月31日までの間に、以下の子どもの世話を保護者として行うことが必要となった労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主を支援します。
1.新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドラインなどに基づき、臨時休業などをした小学校など(保育所等を含みます)に通う子ども
2.新型コロナウイルスに感染した子どもなど、小学校などを休む必要がある子ども

●助成内容:有給休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額×10/10
対象労働者の日額換算賃金額(上限あり)×有給休暇の日数で算出した合計額を支給

※この助成金の申請者は事業主です。事業主の皆さまは、この助成金を活用して有給の休暇制度を設け、年休の有無にかかわらず保護者が希望に応じて休暇を取得できる環境を整えるよう、ご検討ください。

 

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 申請、詳細は
btn_kotira4.gif(厚生労働省ホームページ)

 

小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)

令和3年8月1日から令和4年3月31日までの間に、以下の子どもの世話を保護者として行うことが必要となったため、契約した仕事ができなくなった個人で仕事をする保護者を支援します。
1.新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドライン等に基づき、臨時休業等をした小学校など(保育所等を含みます)に通う子ども
2.新型コロナウイルスに感染した子どもなど、小学校などを休む必要がある子ども

●支援内容:仕事ができなかった日について、1日当たり以下の金額を定額支援
令和4年1月~2月:5,500円/日、令和4年3月:4,500円/日
緊急事態宣言及びまん延帽子等重点措置の対象地域に住所を有する場合:7,500円/日

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 申請、詳細は
btn_kotira4.gif(厚生労働省ホームページ)

2022 / 02 / 01  15:34

[お役立ち情報]事業復活支援金 申請スタート

[お役立ち情報]事業復活支援金 申請スタート

 

新型コロナウイルス感染症により事業活動に影響を受け、売上が減少した事業者・個人事業者に対する新たな支援金が、申請開始となりました。


●申請期間:2022年1月31日(月)~5月31日(火)

●給付対象:以下の2点を満たす中小法人・個人事業主
・新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者
・2021年11月~2022年3月のいずれかの月(対象月)の売上高が、2018年11月~2021年3月の間の任意の同じ月(基準月)の売上高と比較して50%以上又は30%以上50%未満減少した事業者

●給付額
・売上減少率が50%以上の場合:法人上限最大250万円(年間売上高により変動)、個人上限50万円
・売上減少率が30%以上50%未満の場合:法人上限最大150万円(年間売上高により変動)、個人上限30万円

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※計算にあたっては、感染症対策として国・自治体による支援施策により得た給付金・補助金は、各月の事業収入から除きます。ただし、時短要請等に応じた協力金については、対象月の事業収入に加算します。

※一時支援金・月次支援金を受給した事業者は、事前確認が不要、提出書類の省略が可能です。
(2/1時点)NPO法人等公益法人への特例については、検討中です。

 申請、詳細は
btn_kotira4.gif(事業復活支援金ホームページ)

2021 / 12 / 15  13:50

[インタビュー]どうやったら響くのか、関心持ってもらえるのか~ レッドリボンさっぽろ 沼田さん・秋山さん

[インタビュー]どうやったら響くのか、関心持ってもらえるか~ レッドリボンさっぽろ 沼田さん・秋山さん

特定非営利活動法人レッドリボンさっぽろ
エイズ電話相談事業
(令和3年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 保健、医療、福祉の増進助成事業)

 

1995年から26年、HIV/エイズに関する不安に対し、親身に寄り添った電話相談を続けているNPO法人レッドリボンさっぽろを取材しました。

 近年、全国的にHIV/エイズに関連したNPO・NGOが相次いで解散し、相談先が減少しています。そんな中、レッドリボンさっぽろでは、相談しやすい夜間に、フリーダイヤルでの電話相談を継続しています。2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、札幌市でもHIV検査が一時中止となりました。「新型コロナの影響で、保健所の検査ができない。HIV検査ができるところを教えて欲しい」といった相談も寄せられました。

今回は、事務局長沼田栗実ぬまたくるみ・写真右)さん、事務局次長秋山満あきやまみつる・写真左)さんにお話を伺いました。

 

btn_01project2.gif予防啓発も陽性者支援も両方

― まず、レッドリボンさっぽろの活動について教えてください

(沼田さん)HIVの差別・偏見をなくすことを目的に活動しています。毎週火曜日の夜(19~22時)に電話相談を実施し、HIVに関すること全般、しっかり研修を受けた相談員が対応しています。会の発足と同時に電話相談を開始したので、20年以上続いている活動になります。

一方で、電話相談のみでは受け身の活動になってしまうので、様々な所で講演活動を行っています。学校では、HIVに関する基礎的な授業を。『HIV陽性者スピーカー派遣プロジェクト』として、当事者が「感染したらどうなるの?」と語りに行く活動も、秋山さんを中心に実施しています。現在は、コロナ禍で多くのイベントが中止になってしまいましたが、楽しく、正しい知識をつけてもらえるよう、ブース出展など積極的に行っています。

国際的な活動としては、キルトを製作する活動があります。ケニアやウガンダなど、母子感染によってHIVに感染して生まれてきた子どもや、HIVでお母さんがなくなってしまった遺児に温かいキルトを送る活動です。最近は、治療が進んでエイズで亡くなる方は減少しているので、現在はキルトを送ることにこだわらず、キルトの売上金をエイズ遺児支援のNGOに寄付しています。

また、『札幌市エイズ対策推進協議会』の委員を務めるなど行政への提言活動、LGBTの方々とも協働しながら広く啓発活動を行っています。『札幌市エイズ対策推進協議会』は、年1回の開催ですが、昨年度はコロナの影響で開催されませんでした。

 

― コロナ禍による活動への影響はありますか?

(秋山さん)『ななかまどプロジェクト』というHIV陽性者を対象とした活動があります。相談電話では、札幌市内・道内にとどまらず、全国各地からも寄せられるのですが、「同じ立場の当事者に会ったことがない」という方が多く、このプロジェクトの一環で、10年ほど前からHIV陽性者交流会 in HOKKAIDOを企画・運営しています。コロナ禍で、対面での開催が難しくなってしまったので、オンラインでも実施しましたが、年齢層の幅が広く、インターネットの環境が整わない方もいるので、やはりオンライン開催は難しいと感じています。現在は、2ヶ月に1回開催していますが、(コロナ感染の)状況次第では中止しています。参加者は、道内の方が多く10名前後。コロナ禍以前は、全国各地から来札されていました。

HIV/エイズに関する活動をしているNPOは、全国各地に40団体以上ありますが、予防啓発も陽性者支援も両方行っている団体は珍しい方だと思います。
メインで動いているスタッフは、7名ほどです。『ヘルプスタッフ』として登録しているボランティアスタッフは50~60名いますが、実際に活動に参加できる人は限られるので、マンパワー的には常に厳しいです。コロナ禍でスタッフの募集がしにくく、活動が見えにくいことも悩みです。

電話相談は、スタッフの確保ができないと実施できないため、お盆時期や年末年始はお休みすることもあります。緊急事態宣言中なども、スタッフ確保は厳しかったです。
相談は年間360件以上、毎回7-8件あったのですが、コロナ禍で状況はガラっと変わりました。相談件数がかなり減り、昨年度の相談件数は半数ほどになりました。自宅で過ごす時間が増え、一人の時間を持つことができなくなり、電話が掛けられない状況になった方もいるのではないでしょうか。

(沼田さん)さぽーとほっと基金の助成金では、フリーダイヤルの料金を助成していただいているのですが、電話相談が減り、フリーダイヤル料金も減ったので、昨年度は助成金を一部返金しました。
相談の方法としては、メールやSNS・LINE相談が増えてきていますが、文字でのやりとりにはスキルが必要です。フリーダイヤルで、しかも夜間に相談できる機関は、全国でも稀で、他には無いのではないでしょうか。電話は意思疎通がタイムリーに行えるので、伝わったかどうかをその場でフォローできますが、文字では間違って伝わってしまうことも。メールフォームでの相談もありますが、電話相談に移行するようにしています。

また、イベント関係はほぼ中止になりました。さっぽろレインボープライドでのブース出展・パレード参加や、北海道医療大学の大学祭でのブース出展、世界エイズデー札幌実行委員会にも協力していましたが、中止・縮小となり、この間はイベントでの出展ができていません。

 

 

 btn_01project2.gif「居ない」のではなく、「居る」ことを想定した社会づくりが必要

― HIV/エイズへの取り組みの状況について教えてください 

(沼田さん)私たちの活動、特に予防啓発は効果が見えません。検査数の推移が、私たちの活動による影響なのかどうかはわからないですよね。
私の場合、活動に参加するきっかけは、友人がHIV陽性をカミングアウトしてくれたことでした。私は当時学生で、研究室でレッドリボンさっぽろの活動を知り、参加しました。活動に参加して10年。日本の社会は、未だに「言える」ような状況ではありません。HIVが「特殊」と思っている人には、カミングアウトできませんよね。HIV陽性者は「居ない」のではなくて、「言えない」人が多いんです。もちろん、カミングアウトすることが正義・正しいことという訳ではありません。「言うこと」も「言わない」ことも尊重されることが大切だと思います。
医療はどんどん良くなっているのに、エイズやHIVへの偏見や差別は変わらないと感じます。社会が変わっていないことの虚しさを感じつつも、周りの人に助けられて、モチベーションを上げて、少しずつ、これからも一つ一つ取り組んでいきます。

(秋山さん)陽性者の間でも話題になるのが、病院を受診する時のことです。HIV拠点病院は、札幌だと北海道大学病院や札幌医科大学病院等のような大きな基幹病院となっていることが多いです。でも風邪を引いた時には、わざわざそんな大きな病院には行かないですよね。近所のクリニックなどを受診する際に、既往症としてHIVを書かなければならないんですが、みなさん、どうしていますか?ということが話題になります。

HIVの感染については、感染経路がはっきりしているのにも関わらず、過剰な予防策が時に見られます。『スタンダード・プリコーション』という、標準的な予防策で十分なのにも関わらず、防護服のような格好で対応されることもあります。医療者であっても、まだ偏見や正しい知識が無い方も居るのが、悲しいですね。病気を伝えるかどうかは個人の意思ですので、HIV陽性者が身近にいることを前提とした感染症対策をとっていただくとともに、HIVに感染していることを”わざわざ”伝えなくても良い社会にしていきたいです。

 

btn_01project2.gifHIVを軸にいろんなことを考えられる機会を

― 今後の活動についてお聞かせください

(沼田さん)課題はやはり、マンパワーと資金です。助成金を申請するにしても、新たな事業を実施しつつ、事務作業が煩雑になってしまうというのがネックです。事務作業を担当してくれるスタッフが本当に必要です。

あとは、情報発信。会の活動報告も大切ですが、関わっている人たちが「楽しい」を伝えてくれると嬉しいです。札幌芸術の森で「キース・ヘリング展」が行われていますが、キース氏はエイズによる合併症で亡くなったんですよね。コロナ禍でアウトリーチする場が減ってしまいましたが、今後も、様々なことをきっかけに興味を持ってもらえるよう、多方面から積極的に発信していきたいと思っています。

(秋山さん)うーん、やはり支出を減らしたいです。インターネットの通信費、事務所家賃、電気代など見直して、人を集めるための資源にしたい。これまでは、現在のメンバーでなんとかしていかなければと考えていましたが、お金を人に投資することも必要です。イベント時のスタッフも、無給でお願いしていたのを、交通費と手当を出せるようにしたい。若い人にも伝えたいので、コロナ禍後には大学へも積極的に訪問したいです。

(沼田さん)「HIVを知っている・知らない」ということではなくて、性行動が活発な世代に対して、HIV/エイズのことを伝える必要があると思います。札幌市は10代の人工中絶率が全国平均の約2倍と高いんです(札幌市発行「How To Safer Sex」を参考)。これは、性感染症の感染リスクも高いとも言えます。HIVの予防啓発を進めることで、正しい避妊にもつながる場合もあります。どうやったら響くのか、関心持ってもらえるかは、まだまだ手探りですが、HIVを軸にいろんなことを考えられる機会を提供したいです。

また、若い世代は、検査で感染がわかることが多いですが、社会人になるとエイズを発症してからわかる方も少なくありません。
HIV感染症は、治療法が進歩したことで、ウィルス量をコントロールしながら長期療養できるようになり、コントロール可能な慢性疾患と考えられるようになってきています。HIVに感染しても、今まで通りの社会生活を送ることが可能なのですが、何度も言っていますが、間違った知識・情報による差別や偏見が未だにあります。そのためにも、企業での講演機会を増やしたく、募集はしていますが、現時点で依頼はありません。HIVに感染しても諦めない時代。社会で活躍する陽性者の方が多くなることによる新たな課題です。

 

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インタビューを振り返って

HIVという言葉を聞く機会が減り、偏見は解消されつつあるのだと思い込んでいたので、「HIV陽性者は『居ない』のではなくて『言えない』人が多い」という言葉が印象に残りました。いまだ偏見が続いているからこそ、当事者に寄り添いながら、時代に合わせながら活動をしているレッドリボンさっぽろさんは必要不可欠な存在であり、活動を応援していきたいと強く思います。(定森)

 

 

インタビュアー 
定森光(さだもりひかる)
北海道NPOサポートセンター
※インタビューは、2021年8月26日に行いました。

記事作成
佐藤綾乃(さとうあやの)
支援協議会事務局

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