団体からのお知らせ・インタビュー
[インタビュー]すべての親子が子育ち・子育てしやすい社会づくりをめざす~子育て応援かざぐるま 山田さん
NPO法人子育て応援かざぐるま
子育て家庭の孤立を防ぐために!相談機能強化オンライン6講座
(令和4年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 新型コロナウイルス感染症対策市民活動助成事業)
子どもがひとりの人間として尊重され、安心して豊かな子ども時代を過ごせるような社会をめざし、子育て中の親子と共に様々な人々と連携し、人と人、情報そして命を“つなぐ”事業を展開しているNPO法人子育て応援かざぐるまを取材しました。子育てひろばや預かり保育、森のようちえんなど、多岐にわたる活動に取り組んでいます。
今回は、代表理事の山田智子(やまだともこ)さんにお話を伺いました。
※右写真:子育て応援動画より
親になる前に子どものことを学ぶ機会があるわけではない
― まず、子育て応援かざぐるまの活動について教えてください
当団体は1986年6月に、女性の社会進出を支え、おとなもこどもも心豊かな時間を過ごせるように、安全で楽しい託児を心がけることを目的とし、「託児ワーカーズかざぐるま」として発足しました。当初は、『集団保育』を主として行っていましたが、1990年代後半からは、利用者のニーズに応える形で依頼された家庭に出向き、その家族が必要とするサポートや保育が主流となり、親御さんたちの話を聴きながら子どもの遊び相手も行う依頼が急増しました。振り返ってみると、親御さんたちは子育ての不安感や閉塞感、負担感を抱えていたと気が付くのですが、当時は保育士や幼稚園教諭の資格・経験者であるスタッフでも、親御さんとどう関わったら良いか悩んでしまい、葛藤と学び直しの時代が数年続きました。
日本の政策としても、ちょうど『子育て支援』という言葉が出てきた頃で、エンゼルプランなどの少子化対策が施行され始めた時代と重なります。社会の中で、”母親が子どもを他人に預けて、仕事や自分の時間を持つこと”が認知され始め、社会全体として、すべての子育て家庭への支援が必要だと認識されるようになってきていました。そのような状況を受けて、かざぐるまの活動も、単なる『託児』から『子育て支援』にシフトしていきました。また、子育ての現場を通して、地域の中で点在している親子が、お互いにつながっていないことに気づき、週1回地域の会館を借りて、親子の居場所づくりのための「子育てひろば」も開催するようになりました。
その後、2005年6月に法人化しました。次世代を担う子どもたちの健やかな成長を育む、すべての人々が必要とする情報やサービスの提供、子育て支援のネットワーク推進に関わる事業を行い、すべての子どもが安心して、心豊かに育つことが保障される地域社会の実現に寄与することを目的としています。それぞれの子育て家庭に寄り添った丁寧な支援と並行して、札幌市と北海道全体の地域子育て支援の質を向上させていこうと、道内の支援者がみんなで学び合う機会を作るよう努めています。
現在の活動の中心は、札幌市中央区円山で札幌市地域子育て支援事業ひろば型として運営している「子育て拠点てんてん」です。円山地区には、全国から転勤してきて”アウェイ育児”や”ワンオペ育児”を強いられている親子がたくさん住んでいるので、子育て拠点てんてんは、利用する親子の第二の実家として、子育て親子のつながりづくりとして交流の促進や、必要な支援として相談・情報提供・学びの機会提供などを行っています。
誰しも、親になる前に子どものことを学ぶ機会があるわけではありません。現代では、赤ちゃんの世話の経験や子どもの育ちを学ぶ機会を持てないまま親になる人の割合は、全体の75%になります。そのことを踏まえ、大学の発達心理学者、地域の小児科医師や助産師など専門家の協力も得ながら、子どもの心身の発達と、それを踏まえた関わり方に関する講習会を実施したり、『プレママ&プレパパと0・1・2・3歳児を育てる親子のための子育て応援ブック』という動画と連動した小冊子を発行して、全道の地域子育て支援拠点等に送り、応援ブックをテキストとして活用した研修会も行っています。
他にも自主事業として、訪問保育の利用親子のニーズにより始めた「産前産後サポート」や、子育て拠点てんてんでの「預かり保育」、2010年度からは、円山原生林の四季折々の自然を活用したで2歳児の森のようちえん「トコトコくらぶ」も週3回行っています。必要に迫られて、というか、地域の子育て家庭のニーズに応える形で活動していたら、いつの間にか活動がどんどん幅広くなっていきました。気付かないうちに活動期間も長くなり、私たちは子育て支援の分野では全国で3本の指に入る老舗になっています(笑)
★地域子育て支援拠点事業
地域の子育て支援機能の充実を図り、子育ての不安感等を緩和し、子どもの健やかな育ちを支援することを目的とし、乳幼児およびその保護者が相互の交流を行う場所を開設し、子育てについての相談、情報の提供、助言その他の援助を行う事業。札幌市では、公設公営の保育・子育て支援センターが10区10か所にあり、他にNPO等民間団体が運営しているひろば型、児童館を活用して行う児童館型がある。
コロナウイルス感染症拡大により3ヶ月半ほどの間一斉に休止となったが、子育て拠点てんてんでは、その間もスタッフを配置し、困ったときの親子の駆け込み寺として『なにかあれば来てください!』という体制を作りつつ、円山の森のアウトリーチも行った。
私たちのできること、やるべきことは何か
― コロナ禍において、活動への影響や親子を取り巻く状況はどうでしたか?
新型コロナウイルス感染拡大による子育て家庭への影響は大きかったです。感染拡大から2年以上が経ちますが、未だに子育てに関する支援センター等が閉鎖している所もあり、子育てに関する相談業務は電話でとどまっています。また、札幌市では未だに乳児10ヶ月健診もストップしている状態で、4ヶ月健診のあとは1歳半健診まで期間が空いてしまっています。各家庭に「心配な方はご相談ください」程度の封書でのぐらいのフォローでは、本当に必要な声を拾えないのではと思います。
コロナ禍で初めて子どもを生んだお母さんたちは、両親教室もない、立会分娩もできない、里帰りも実家の親に手伝いに来てもらうこともできない状況の中で出産を迎えました。赤ちゃんが生まれた後も、保健センターの乳児家庭全戸訪問が休止で、必要な子育ての情報を何も得られないまま、家で母子だけで過ごさなければならなかったのです。
先が見えない今、私たちのできること、やるべきことは何だろう?とみんなで考えた末に、自宅にこもっていても、子育てに必要な知識や技の伝承が必要と考え、2020年度のさぽーとほっと基金助成事業では、「プレママ&プレパパと0・1・2・3歳児を育てる親子のための子育て応援ブック」の作成と、その応援ブックに連動した子育て応援動画107本を作成しました。
★プレママ&プレパパと0・1・2・3歳児を育てる親子のための子育て応援ブック
★子育て応援動画
日頃から関係性を深め、お互いの取り組みを知っておく
― 今回の助成事業について教えてください
2019年に札幌で起きた2歳児衰弱死の事件(詩梨ちゃん事件)に対して、私だけではなく、子育て支援関係者は皆がショックを受け、その後もモヤモヤしながら活動を行ってきていました。そして、市内の地域子育て支援拠点(105か所)や、利用者支援専門員、各区の保健センターなどの子ども・子育てに関わる専門職の方たちと、もっと学び合いたいと思うようになりました。
コロナの感染拡大が長引いていた後も、札幌市の関係各所では、オンラインでの取り組みがほとんど行われていませんでした。Wi-Fiなどのネット環境が整っていなかったり、業務にオンラインを導入することに対する抵抗感があるようでした。国のオンラインの環境整備の補助金を活用して、ネット環境の整備を進めてはどうかと提案しても、なかなか進みませんでした。今後のことを考えれば、オンライン化は今のうちに進めるべきだと思っています。オンラインの活用が進めば、コロナ禍でも親子の顔や表情を見て相談対応することも可能になります。そこで、関係各所のオンライン化を進める一助として、札幌市と民間の地域子育て支援拠点のスタッフ、各区の利用者支援専門員や保健センターの保健師等、子ども・子育てに関わる人々が、子育て支援に関わる相談の受け方や対応の方法をともに学び、コロナ禍でもできることをみんなで考える場が必要と考え、オンラインを活用した6講座を企画しました。
― 今回の助成事業の反響などはいかがでしたか?
とても手応えを感じています。2時間の講座を6回実施しましたが、計50施設が参加してくれました。札幌市の全区の子育て支援係、地域子育て支援拠点や保健センターも参加してくれました。全道にも呼びかけ、帯広市・旭川市・釧路市などからも参加していただきました。ただ、やはりネット環境が整っていないから参加できないという声も少なからずありました。
6講座のうち2講座は「NPO法人子育てひろば全国連絡協議会」の協力も得ました。オンラインツールの使い方、オンライン相談での注意事項、オンラインひろば入門講座など、オンラインの活用についての時間を多くとりました。あとは相談支援の記録の取り方や事例検討、守秘義務について、その他、札幌市の取り組みに関する話も盛り込みました。
最終回の札幌市の取り組みの回では、最後に参加者全員でグループワークを行い、今後の活動について検討する場としました。単発の講演会だけでは、今後の市の活動に反映させるところまで持っていけないと感じていたので、民間と市の職員たちが、同じ土壌で学び合えたということに、とても意義を感じています。市の職員同士でも、隣の部署の取り組みを知る良い機会になったようです。”詩梨ちゃん事件”のような悲しい事件が二度と起きない地域社会をつくるためには、民間と行政が、行政内の部署同士が、何かあったときにすぐに必要なところにつなげることができるように、日頃から関係性を深め、お互いの取り組みを知っておくことが大切だと思っています。
今後は、もっと、子育てメッセ的な、子どもや子育てを取り巻く様々な分野の人たちが一堂に会して、自分たちの活動発表をして、お互いに学び合って、つながりたい人とつながれるような機会を作っていきたいと思っています。コロナの直前に一度、そのような取り組みを行ったことがあるのですが、もっと様々な人を巻き込んで、その拡大版をやってみたいと思っています。その時はぜひ市長にも来てもらって、今後の札幌市の子育て支援について、みんなで考える機会としたいです。一発の打ち上げ花火で終わるのではなく、しくみとして続けられるように頑張っていきます。
次のバトンを渡す人を育てること
― 運営上の課題や、今後の活動について聞かせてください
今は拠点の移転問題が一番です。マンションの老朽化で立ち退きしなければならなくて、移転先を探しているのですが、ここがどれだけ良い場所かをしみじみと感じているところです。転勤族が多い札幌市の中でも、円山という地域は特に多いです。自分が生まれ育った市町村以外で子育てをしている”アウェイ育児”を余儀なくされている親子が9割近くもいるのです。円山の転勤族の親子を捨ててはいけないし、子育て支援拠点は中学校区に一つの設置なので、移転するにしてもエリアが限定されます。それに円山の四季折々の豊かな自然環境も魅力的です。(※2023年4月現在、無事に円山エリアでの移転先が決まりました)
それから、私は今62歳ですが、この世代の人達が立ち上げたNPOは全国にも多いですよね。自身の身体のことや両方の親の介護、子や孫の子育て支援など、いろんなことを抱えながら30年間活動を続けていますが、この先のことを考えるとやはり、代表として次のバトンを渡す人を育てることが最重要課題です。若いスタッフも入ってきてくれて、日々の業務は回っているものの、正直なところ、法人の運営に関われる人材の育成がなかなかできていません。でも、今回の講座は人材の育成という点においても非常に有意義でした。うちのスタッフにも可能な限り参加してもらい、グループワークでの発表など聞いていると、スタッフの成長を感じることができました。
支援の担い手は育っている一方で、この先どのように団体を存続させていくか、成長させていくか。最低賃金に近い給与のため、独身の方や若い方への保障が難しいというのも課題です。働く場として魅力のあるものにするには、どうしていったら良いか、考えていかなければと思っています。
インタビューを振り返って
コロナ渦という大きな外部環境の変化の中で、オンラインを活用して活動を展開された点が素晴らしいと感じました。子育て支援に関するノウハウを体系化し研修としてまとめ・発信したことで、今後の更なる広がりが期待できると感じました。(久保)
インタビュアー
久保匠(くぼたくみ)
北海道NPOサポートセンター
※インタビューは、2022年11月16日「子育て拠点てんてん」を実施している法人事務所を訪問して行いました。
[インタビュー]つながりあって、助け合えるような活動を~あえりあ 高橋さん
NPO法人あえりあ
「介護が必要になる前に知っておこう」セミナー事業
(令和4年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 スタートアップ助成事業)
NPO法人あえりあは、『人と人が支え合える未来』をつくることをビジョンに掲げ、医療福祉分野の有資格者や資格取得予定の方と、医療福祉のサポートが必要な方々に対し、オンライン・オフラインを問わず必要な支援を企画・運営する事業を行っています。
今回は、代表理事の高橋亜由美(たかはしあゆみ)さんにお話を伺いました。
専門職が地域の中で何かできないか
― まず、あえりあの活動について教えてください
私自身看護師として働いているのですが、学生時代には有償ボランティアとして脳性まひの方の介助を行い、看護師になってからは、医療的ケア児が学校に通う際には、看護師か親が付き添わなければならないため、そのサポートを行ってきました。(※2022年より医療的ケア児支援法が施行され、学校等においては設置者に対する配置義務となりました)
医療職、介護職、福祉職は、制度の中で満たしきれていないこと、病院や訪問介護、訪問看護だけでは出来ないことがあるのを、日々痛感している方も多くいます。普段は業務に追われていますが、どうにかできないかな、週1回や月1回という頻度であればお手伝いしたいと考えている方も多いのです。そこで、専門職が地域の中で何かできないかということを考え、2021年7月にNPO法人あえりあを設立しました。
現在の活動としては、医療・福祉・介護の有資格者と、サポートが必要な人がつながり合い、助け合える『さぽんて』というオンライン上のプラットフォームを運営しています。現在有資格者が約75名、サポート必要な人が15名、法人は1法人登録しています。障がい児の兄弟の習い事のために、少しの時間子どもと一緒に過ごしてほしいなど、有資格者がちょっとしたお手伝いの有償ボランティアをしています。
他に、助成金を活用してのセミナーや、NPO法人MINNAの会が運営している”ユニバーサルカフェminna”での介護予防教室『ココカラ~ココロもカラダも健康に』や『ココカラ保健室』も開催しています。
これらは、『さぽんて』の有資格者が有志で集まってくれて、運営しています。専門職が地域の中で活躍できる場を作り始めたところです。
介護が始まる前に知る機会をつくる
― 今回の助成事業について教えてください
『さぽんて』を立ち上げるときに、家族の介護経験のある方にどんなサービスだと良いかリサーチしたところ、介護が必要になった時にどこに連絡すればよいのか、介護保険の使い方やその窓口はどこにあるのか、または軽度の認知症の方と暮らすときの生活の仕方が分からないなど、介護についての知識を持っていないがゆえに困っていることがわかりました。そのため、家族に介護が必要になった時に必要になる情報を、介護が始まる前に知る機会をつくるためのセミナーを開催することにしました。
さぽーとほっと基金の助成事業として2022年7・8・9月に『介護が必要になる前に知っておこうセミナー』を開催しました。セミナーの開催は初めての経験であり、社会福祉協議会や地域包括支援センターなども含めた札幌市内の現場の方との関係ができておらず、集客に苦労しました。
今後のオンラインとのハイブリット開催のために、トライアルもできたので、次のセミナーでやりたいことも発見できました。2023年1月・2月に開催した第二段の『介護が必要になる前に知っておこうセミナー』では、参加者の半数が初めて来てくださる方であり、フライヤーをお渡しした先からのお申込みもあり、嬉しかったです。
病院や施設だけが職場ではありません
― コロナ禍において、活動への影響はいかがでしょうか?
コロナ禍の課題としては、高齢者が集まる場所が減っていることが挙げられます。市が運営している施設が一斉に休館となった時期もあり、そこでの活動が休止となり、集まれる場所自体が減りました。『ココカラ』『ココカラ保健室』は、コロナ禍で減ってしまった介護予防教室の場でありながら、現役の専門職ともつながることができる場でもあり、専門職にとっても地域住民から様々なことを教えていただける場にもなっています。
一方で、コロナ禍でオンラインツールが一般化したおかげで、障がいのある人、介護をしている人、体調が悪く会場参加が難しくなった人でも、オンラインでセミナーに参加できるようになりました。また、『ココカラ』『ココカラ保健室』では、オンラインで北海道外の言語聴覚士さんに嚥下体操を行ってもらったり、会場参加できないスタッフがオンラインでサポートしたり、選択肢の幅が広がっています。
― 運営上の課題や、今後の活動について聞かせてください
『さぽんて』開発資金をクラウドファンディングで集めましたが、継続するためには収益化を図る必要があること、札幌市内のフィールドワークを増やすこと、人材の育成や事務局の稼働、実際に現場で動ける人の確保など、課題ばかりです。最近は先輩NPOとの交流が増え心強いです。
今回の『介護が必要になる前に知っておこうセミナー』では、対象者が60~70代だったので開催日は土日の午前を選びましたが、今後、働き盛りの人にこそ、親の会議が必要になる前に、介護について知ってもらいたいため、企業と連携する必要もあると考えています。
また、学生さんなどもっと若い人たちにも、医療・福祉・介護について知ってもらいたいです。
そして、医療職・介護職・福祉職は、病院や施設だけが職場ではありません。地域での活躍を知っている人は少ないです。デイサービスというと高齢者のためのものとイメージしがちですが、障がい児のデイサービスもあります。医療・福祉・介護のサービスは、まだまだ知られていないことが多いので、学校など様々な機会に学生さんに向けてもお話したいです。
インタビューを振り返って
代表の高橋さんが、同じ思いを持った仲間を見つけ、多様な人とつながりあい、いろんなことを吸収ながら活動を拡げてらっしゃるのがとても印象的でした。現状の制度の隙間を埋め、専門職とサポートが必要な人、そのまわりにいる様々な人々の思いをくみ取り実現する仕組みづくりを、この先も進めていっていただきたいです!(中西)
インタビュアー
中西希恵(なかにしきえ)北海道NPOサポートセンター
※インタビューは、2023年2月10日にオンラインにて行いました。
[インタビュー]ペットと共に始める終活~ホッカイドウ・アニマル・ロー 今井さん
NPO法人ホッカイドウ・アニマル・ロー
高齢者飼い主が大切なペットと共に始める終活の知識を学び、共有と交流を深め、安心なペットライフと向き合う事業
(令和4年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 アリヤス基金事業)
NPO法人ホッカイドウ・アニマル・ローは、動物愛護に関する意識の向上や、適正飼育および終生飼養に関する知識の普及、動物愛護のための法的な支援事業を行っています。
今回は、代表理事の今井真由美(いまいまゆみ)さんにお話を伺いました。
※右写真は、2022年12月の防災セミナーの様子
知識と愛情をもった飼い主が増えることが願い
― まず、ホッカイドウ・アニマル・ローの活動について教えてください
ホッカイドウ・アニマル・ロー(HALAW・ハロー)は、法律専門職の視点から適切なペットライフを提案するため、動物が好きな行政書士が中心となり、2016年に動物法務の研究会から始め、2017年にNPO法人化しました。メンバーの半数は行政書士で、動物ケアをしている看護師やドッグトレーナーの方も参加しています。
メンバーはみんな本業を持っている人たちなので、活動時間は限られていますが、主な活動はペットに関する啓発セミナーと、夏頃に開催するアニマルセラピーのオンラインセミナーです。
ペット生活は多様化が進んでいます。ペットは家族の一員と言われますが、人間とは違う点ももちろんたくさんあります。ペットを迎えるときには愛情だけでなく知識が必要です。犬の散歩時や猫の外飼いなどにおけるトラブルも生じます。法律面では動物愛護管理法や民法などが関わってきますので、飼い主の責務を法的な観点からも伝えなければなりません。私たちの目的は、人と動物の共生社会の実現です。知識と愛情をもった飼い主が増えることが願いです。
飼い主の環境変化
― 今回の助成事業について教えてください
施設入所や長期入院、死亡など、高齢飼い主の環境変化や健康状態により、ペットが取り残されたり、ペットを残して入院することを拒否する飼い主の実態などを踏まえ、「ペットと共に始める終活」というテーマで、昨年8月から5回のセミナーを開催しました。
今回は知識だけではなく、参加者同士の交流の機会と、顔が見える関係を大事にしたいと考えました。セミナーは、1回目は「猫の飼育の終活について」。新しい飼い主に先住猫がいた場合どのように向き合うかなどについてお話ししました。2回目は「一生幸せに過ごすための犬のしつけ」、3回目は「お別れと向き合う準備」として葬儀や供養について、4回目は、「生命保険と損害保険、ペット保険の活用についてのセミナー。最後に特別講演として、「ペットと暮らす防災セミナー」を開催しました。札幌市動物管理センターの職員さん、また獣医師さんや災害支援動物危機管理士、ドッグトレーナーの方をお招きしました。
今回のセミナーでは、リピーターの方や、動物の仕事をしている人やこれからしたいという人の参加が増えたと感じています。これから飼い主や動物に関わる人の交流が生まれてくることを期待しています。今は、会員になっていただいた方とSNSで交流しています。今回は、セミナーの告知をSNSで広げてくれるなど、活動の広がりを実感することが増えました。
第1回セミナー「猫と仲良くなる方法!!」 最後のセミナーは「防災・減災」
― コロナ禍における影響はありましたか?
今回の助成事業においても、コロナ禍の影響はありました。コロナ感染症には十分注意を払い、募集締切と開催日までの間、感染状況を見つつオンラインと会場開催の両方に対応できる準備をしました。最後の特別講演では講師と近しい方が感染したため、講演部分は録画配信で対応しました。会場のセミナーは、会場定員の半数以下にしていますが、これまでも顔の見える関係を重視してきたので、もともと定員は少なめにしています。
ペットと高齢者の課題には類似性がある
― 運営上の課題や、今後の活動について聞かせてください
動物に関わる活動をしていると、保護団体と思われ、寄付をくださる方もいらっしゃいます。団体活動について誤解を受けないよう、法人としては寄付を募っておらず、会費や助成金で運営費を賄っています。動物の保護に関しては、令和元年に『動物の愛護及び管理に関する法律』の改正があり、施設管理の基準など、保護団体にとっては厳しくなった部分もあります。
2023年もセミナーを開催します。飼い主さんだけでなく、ご家族にも参加していただきたいです。
独居が増えている状況で、遠方のご家族の方がペットを飼っていることを知らなかったという事例もあります。親族がお亡くなりになったときに残されるペットの存在を感じ、思いの部分にも向き合っていただく機会になると思います。
ペットと高齢者の課題には類似性があると思います。声をあげたいけれどできない、どこに相談していいかわからないなど、心を閉ざしてしまう要因が社会にあるのではないかと思いますので、孤立を解消するために取り組みたいと思います。当法人の活動には、セミナー参加の他、賛助会員、正会員として参加できます。お待ちしてます!
インタビューを振り返って
長い歴史がある動物愛護の分野において、多頭飼育などの問題が表面化してきたのは比較的最近のことではないかと思います。高齢化社会の進展や、動物の保護に関する意識の変化、法令改正など、団体が対応しなければならないことは増えています。ホッカイドウ・アニマル・ローさんのような、専門家による分野に特化した啓発活動の必要性もますます高まってくるのではないかと思いました。(高山)
インタビュアー
高山大祐(たかやまだいすけ)
北海道NPOファンド
※インタビューは、2023年2月28日オンラインにて行いました。
[インタビュー]子ども達に身体を動かすことに大切さ、楽しさを感じてもらいたい A-bank北海道 木村さん
一般社団法人A-bank北海道
アスリート先生
(令和4年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 子どもの健全育成事業)
A-bank北海道は、アスリートが培ったフィジカル・スキルを、北海道の学校教育、地域の力として活かす仕組みをつくることを目指し、産官学アスリートの連動により学校、地域にアスリートを派遣する事業などを行っている団体です。今回は団体事務所のあるコワーキングスペース・ドリノキにて、事務局長の木村圭吾(きむらけいご)さんにお話を伺いました。
※右写真は、なわとびの授業の様子
アスリートが子どもたちの夢や成長のための教材を考える
― まず、A-bank北海道の活動について教えてください
元コンサドーレ札幌の曽田雄志さんが、アスリートの有志とともに東日本大震災の復興支援を行うプロジェクト(ENプロジェクト)を立ち上げたのがきっかけです。ENプロジェクトの活動を行う中で、個人、NPO、企業など様々な関わりが生まれ、そこで築いたネットワークをもとに、2013年にA-bank北海道を設立しました。
子どもたちがスポーツや運動、体育を好きになってもらうために、我々に何ができるかというところから考えました。子どもたちの憧れであるアスリートが、夢や成長のための教材を考え、教員とともに体育の授業などにおいて指導を行うことができれば、よりスポーツに関心を持ってもらうことができ、より身体を動かすことに興味を持ってもらえるはず。そして、それが子どもたちに対して成長の機会を提供することにつながると考えました。
また一方で、当団体ではアスリートのキャリア形成という課題解決にも取り組んでいます。子どもたちが将来の夢としての『スポーツ選手』を実現できるのは一握りです。さらに、たとえその夢を実現したとしても、引退後の人生も豊かに出来ている方は更に少ないのが現状です。例えば、Jリーグの選手では大学卒業後にプロとなり実働3年、25歳で引退してしまう選手だって珍しくありません。でも、そうなるとその後の人生の方がずっと長いんですよね。ですから、アスリートに当団体の活動に参加してもらうことで、引退後のセカンドキャリア形成につなげます。
派遣するアスリートを「体育の授業の先生」として
― 今回の助成事業について教えてください
全道の小中学校・特別支援学校へアスリートを派遣します。運動の専門家であるアスリートから、直接体育の授業を受けることで、子どもたちに身体を動かすことへの興味関心を持ってもらい、スポーツの楽しさを実感してもらうことが目的です。
私たちの活動に対して教育委員会から後援はいただいていましたが、資金的な援助は無かったため、活動資金は賛同してくれる企業からの協賛金ですべて賄っていました。さぽーとほっと基金の助成を活用することで、より多くの学校へ伺えるようになればと考えて申請しました。これまでは年間20〜25校に訪問していました。でも、札幌市内には200〜300の学校があります。僕としては、可能なら全部の学校に行きたいんですよ。
授業は8種目。サッカー・バスケ・野球・なわとびなどで、「アスリート先生」の授業は学校からの応募により実施しているので、たくさん応募してもらえるよう毎年市内の全学校に周知しています。中でもなわとびとダンスは人気がありますね。
この事業は、『アスリートのイベントに子どもたちが来る』というスタイルではなく、当初から訪問の形を取っていました。派遣するアスリートを「体育の授業の先生」として扱ってほしいという考えです。なので、授業のカリキュラムづくりからアスリートが参加します。小学校5年生だと8時間ぐらいサッカーの授業があるのですが、学校に対しては、少なくともその半分は担当させてくださいと伝えています。学校の先生によっては、基礎をみっちりやってほしいというところもあれば、最後にみんなで楽しくゲームができるようにしたいという声もあり、様々です。各アスリートはその要望にあわせて、カリキュラムを作っています。アスリート自身にとっても指導者としての学びの機会にもなっています。
― コロナ禍において、活動への影響はいかがでしょうか?
2020年は学校が休校となる期間もあり、1学期はまったく活動ができませんでした。1年間でまんべんなく活動できるように20校を選んでいたので、日程の再調整がとても大変でしたね。派遣するアスリートのうち、2/3は本業が別にあって、1/3は当団体の活動がメインです。当団体の活動がメインのメンバーは本当に大変でした。学校の授業とは別にイベントなども企画していましたが、すべて中止せざるを得ませんでした。2022年度になってからは、ほぼ行動規制もなくなり、基本的にはコロナ禍以前と同じ状況に戻ってきていますが、自治体主催のイベントはまだまだ慎重ですね。
また、子どもたちの習い事としてのスポーツもまだ満足に行える状況ではないですし、子どもたちが思いっきり身体を動かす機会が奪われているので、体力低下が心配です。屋外で人との距離があればマスクを外しましょう、体育の授業は熱中症の危険性もあるのでマスクは外しましょう、と言われるようになってはきましたが、多くの子どもたちはマスクを外しません。逆に外すことに違和感を持っている子どもさえいますし、先生方もマスクをつけたままなので、子どもたちも外しづらいですよね。そのような中で、こちらからマスクを外せとも言えない空気感は、正直つらいです。
― 運営上の課題や、今後の活動について聞かせてください
課題はやはり人ですね。業務量的には、もう1~2名ほしいところですが、人件費の負担を考えると難しいです。うちの事業は体験型なので、オンライン化しづらいタイプの事業でもあります。現在、事業はコロナ渦前の水準に戻ってきているとはいえ、100%ではない状況ですので、通常業務がもう少し回るようになれば、もっと事業の拡大など考えられるかなとは思っています。今が踏ん張りどころです。
インタビューを振り返って
スポーツという、対面実施が前提である分野で活動をされているため、受けた影響が大きいですが、培ってきた実績、高い専門性を活かして活動を継続されていることが、素晴らしいと感じました。(久保)
インタビュアー
久保匠(くぼたくみ)北海道NPOサポートセンター
※インタビューは、2022年10月5日にさっぽろ大通コワーキングスペース・ドリノキにて行いました。
[お役立ち情報]助成金の募集情報を更新しました(新着情報4件)
お役立ち情報のページでは、助成金の募集情報を随時更新しています。
3月31日付締切のものを中心に、4件の新着情報がありますので、参考にしてください。
助成金情報へのリンクは