団体からのお知らせ・インタビュー
[座談会企画]余市・札幌・夕張より~この1年半・これからといま(2)
新型コロナウイルス感染症の拡大とその対策のため、北海道内のNPO・市民活動も、「交流」や「集まること」への心理的なためらいや不安により、休業や自粛、良し悪しの判断すら難しい選択を迫られました。一方で、行政の支援施策や民間資金支援の対象は、緊急的な対策や、感染拡大を起因とする損害の回復を主たる目的とし、NPO・市民活動・地域活動の従来の活動への支援は多くはありません。
コロナウイルス感染症の拡大以前から、地域において必要とされている活動は、どのような岐路に立たされたのか。また、「活動をゼロにしない」ように、どのような工夫や試行錯誤があったのか。今回の座談会では、北海道内3ヶ所をつなぎ、『コロナ禍』と称されたこの1年半を振り返りつつ、活動の状況などを伺いました。皆さんの地域での活動の参考や、新たなネットワークづくりのきっかけになることを期待します。
※この企画は2021年7月7日に開催しました。2回に渡って記事を掲載します。
右写真:夕張こども食堂の様子。夕張メロンも見えます(一般社団法人清水沢プロジェクト)
スピーカーの皆さん
◆坂本純科(さかもとじゅんか)さん
◆平井照枝(ひらいてるえ)さん
◆佐藤真奈美(さとうまなみ)さん
◆進行 北海道内中間支援組織コロナアクション 定森光(さだもりひかる)NPO法人北海道NPOサポートセンター
活動地域との関係で意識すること
ー それぞれ、地域との関係性に特色があるように見えますが、意識することはありますか。地域との関係性をどのように築いてきたのか教えてください。(コロナアクション成田)
坂本:余市は農村地帯で周囲はほぼすべて農家。農家ではない私たちが農地を借りて農業をしていくこと自体が、近隣から注目されてきたと感じています。
エコロジー重視の無農薬農業は従来農業と考え方が違い、虫や病気も実際に出してしまいますが、地元とトラブルにならないようにということは肝に命じながらやっています。私たちの方が後から来た立場であり、活動を支えてくれるたくさんの方のためにも、対立をしないように心掛けています。
学生やボランティアが近隣の手伝いや地域の行事に出たり、除雪をしたり、若者たちが頑張って外に出て働いてきたことで「へんなやつだけど悪いやつらじゃない」という認識を持っていただいています。最初の入り口は厳しい目で見られても、仲間だと思ってもらえたらものすごく親切にしてくれて、今につながっている。
まずは近所の方の理解と信頼を得て、味方になってもらえたことが、農協や地域のメインストリームの方の理解につながったと感じています。大学の先生の協力や公共の補助金をたくさん取ったとしても、そのような信頼は得られなかったのではないかと。「急がば回れ」で、身近な方に理解してもらったことが良かったと思います。
佐藤:清水沢では、観光・交流と言ってはいますが、地域にとっては人が来ればいいというものでもないと思っています。コロナに関わらず、もともとなんでも受け入れられるような余裕は、この地域にはありません。
清水沢コミュニティゲートという施設は、アーティストなどの外の人が最初に入っていく「ゲート(門)」ですが、「むやみに人を入れない」「へんな人を入れない」という「門番」としての役割もはたしています。具体的には、わっと来てわっと去っていくような、マスツーリストは避けています。清水沢は生活の場であり、たくさんお客様が来てほしいわけではない。「お客様は神様」ではなく、仲間になってくれる人に来ていただきたい。
また、メディアにも注意しています。夕張は財政破綻で注目を浴び、住民はこれまでメディアなどに尊厳を踏みにじられてきたと感じます。「廃墟のまち」など言いたい放題、興味本位にネット発信をするような個人の方もいます。私たちも、結果的にそのような報道に協力してしまったこともあり、その反省の上で、どういうふうに地域を守りながら活動するか試行錯誤しています。最低限、地域の方に不安を与えないことを大前提に活動をしていきたいと思います。
アーティスト・イン・レジデンスで滞在したドイツ在住のアーティスト菊池史子さん(左からお二人目)と
清水沢コミュニティゲートのスタッフ
ー 地域との関わりは地域性が大事で、それぞれの地域で異なること、また関わり方を模索しながら活動をしなければならないことが分かりました。札幌で活動していると「地域が見えない」と感じることがあります。札幌で活動している平井さんは、「地域」との関わりをどう捉えてどう感じているでしょうか?
平井:地域のみなさんと関わりを持って、というのは難しいかな、と感じています。もちろん活動のすべてを自分たちだけではできないので、学習支援の「Kacotam」さん、DVや心のケアは「holoholo」さん、グリーフケアの「sachi」さんなど他の団体と連携してきました。
「子育てサロン」や地域で子育て支援をしている団体とは、主に平日日中の開催ということもあり、つながりがこれまであまりなかったのですが、お話をする機会をいただいたりして、これからもつながりを作りたいと思っています。
また、コロナ前には全く関わりがなかった飲食店などが「大変って聞いたから」と協力してくれ、新しいつながりが出来ました。
札幌以外の団体では、釧路・旭川・函館などの困窮者支援や千歳・苫小牧などのフードバンクの団体などとつながりができました。会員さんには、みなさんを応援してくれる方がたくさんいますよ、とメッセージをいれて食糧支援を送っています。会ったこともない人とつながれたことが嬉しい、という声も聞きます。
全道各地にいる会員さんが、それぞれの地域の支援団体とのつながりができれば、より安心感があると思います。いまは、稚内や北見などの情報が欲しいです。
コロナ禍支援でできること
坂本:食糧支援についてはどのようなものを求めているのでしょうか?
平井:基本的には米や調味料、おやつなど、日持ちするもの。賞味期限が1カ月以上残っているもの。根菜を提供いただき配布したこともあるが、保存ができるものがいいですね。
お寺のお供えを提供する全国組織の「おてらおやつクラブ」には多くの支援をいただいています。お供えのお裾分けではなく、お寺さんや檀家さんが私たちの希望を聞いて買っていただいて「お供え」をしてから、それを支援していただくこともあります。
ひとり親家庭は、家族のつながりが薄く、荷物が届いた経験がない子どももいるんです。食糧支援の荷物が届くと「本当にうちに来たの?開けていいの?」と何度も確認し、「サンタさんが来た!」というような喜びようで、おやつなどが入っていると、さらに喜んでくれます。
野菜などは対面で状態を確認してもらいながら、であれば渡せますが、配送すると届いた時に傷んでいる可能性があり、送ることができません。開けたときに、傷んだもの、賞味期限が切れているものなどが入っていたら、受け取った方はどう思うか…。「自分たちを大切に思ってくれている」と感じてほしいので、そこは気を付けています。
0円マーケットと称して、対面で食料などを配布するイベントも行っているので、タイミングが合えばその時に野菜なども提供してもらえると、とても嬉しいです。
坂本:農村では野菜や果物のハネ品がたくさんあるんですが、なかなか提供のタイミングが会わないですね。災害支援などでもそうですが…。一方では廃棄し、一方では必要とされているので、いたましい。
ー 支援したいという人はたくさんいると思うが、どのような物資があって、いつどこに持っていけばいいのか、どのようなやりとりをすればいいのか。情報交換ができるルートを作っておきたいですね。(コロナアクション宮本)
坂本:災害支援でも、使えないモノをたくさん送ってしまう方などがいます。倉庫も必要だし、上手に物品をオーガナイズできるところもあれば、難しいところもありますね。
平井:古古米なども、食べれば食べられるのですが、賞味期限を大幅に過ぎたものを送られたら傷つく人もいるのではないかと思います。前もって「そういうものでもよければ」と希望を聞き、送ることができればよいのですが、なかなかそこまでできる余裕がありません。
ー 対面で確認しながらであればお渡しすることもできるのであれば、渡し方の工夫ができるといいですね。(コロナアクション成田)
ブックサンタの本を会員のボランティアさんたちと発送作業をする
中間支援に期待すること
ー 最後に、今後の展望についてや、私たちのような中間支援に期待することなどがあればお聞きしたいです。この1年半、もっとこうしてほしかったな、という事があれば今後につなげたいと思います。
坂本:私たちの団体も、地域の中では、情報のマッチングなど中間支援的な役割があるのかもしれません。平井さんのおっしゃるように、情報とモノの届け方に課題がある。今の世界の状況は、情報などが行き届いてなくて分断されていると感じるので、サポートしていきたい。
いま団体には、教育旅行のリクエストを多くいただいています。ショッピングやアトラクションだけではなく、学習系プログラムが望まれていて、充実させたいと思っています。余市だけでは300人という数を受け入れできませんが、海や森の産業や環境系、福祉系の活動などにも受け入れをしてもらって、研修を育てたいです。
「農業体験」となるとエコビレッジでしか提供できませんが、「SDGs」となると地域の一次産業や福祉系など対象になり、ひろがっていきます。
SDGsを意識し、様々な主体と、単純に仲良くしましょうではなく、それぞれが「得」と感じられるハッピーなつながりを作っていきたいです。
平井:日々、ひとり親の切実な声が届いています。情報が行き届いていない、ということも切実に感じます。支援策はさまざまあるが、情報が一人一人に届いていません。
「一緒に申請書を書きましょう」という講座をしたいです。例えば、課税・非課税世帯など、自分がどこに当てはまるかどうかもなかなか分からないし。そこまでフォローしていかないと、せっかくの支援策、制度が使われません。
コロナ禍の当初は、10万円の給付金をそのまま寄附してくださる方もいて、びっくりするほど寄附をいただきました。今は激減してしまったけれども、ひとり親を取り巻く環境はより厳しくなっていて、改めて寄附の呼びかけや連携も必要だと思っています。
私たちの活動は食糧支援がメインではありませんが、今は緊急的にどうしても必要と感じています。フードバンクなど道内各地の支援団体の情報も集め、ひとり親家庭だけでなく、学生さんや高齢のかたにも支援が行き届けばいいなと思います。そういう点では私たちも中間支援の役割を持っています。
中間支援のみなさんには情報の提供、特に各地の支援情報の提供をいただければ助かるな、と思います。
佐藤:みなさんと同じように、私たちも外と地域をつなぐ中間支援の面があります。
拠点の「清水沢コミュニティゲート」はもともと「家」だったこともあり、イベントは食べ物を持ち寄って行うのが定番でしたが、コロナ禍ではできないのが残念です。高齢者はだんだん亡くなってしまっていく。コロナ前の焼肉パーティーでお会いしたのが最後だった、という方も。
夕張の歴史や誇りを次の世代に引き継ぐ活動に力を入れたいと思い、子ども・子育て支援を目的とした地域おこし協力隊を受け入れて、学校や園の行事への関わりなどをしはじめたところです。
人口が7,100人台と最盛期の16分の1となった夕張は、縮小の最先端にいます。担い手が少なくなったこの地域にとって、便利屋的に使ってもらえればいいなと思います。
中間支援の方から提供される助成金情報や、組織運営などの情報発信が実際に役に立つこともありましたので、これからもいろいろな情報を出してもらえれば助かります。
ー本日は長時間、お話をいただきありがとうございました。
北海道内中間支援組織コロナアクションって?
コロナ禍により市民活動が停滞することないように、また新たな課題にも対応できるように、北海道内の中間支援組織が連携した広域ネットワークを創り、現場で活動しているNPOを支えていくことを目的とした北海道内の中間支援組織の有志によるネットワーク体です。
私たちは、ひとりでも多くの方に、必要とされる支援を届けられる仕組みづくりを、一緒に考え構築し、ポストコロナを見据えた「コロナアクション」を実行していきます。市民活動は不要不急ではありません。
COVID-19の感染拡大により様々な影響が引き起こされているコロナ禍において、私たちは不要不急の外出を控え、様々な事柄にも自粛を求められてきました。しかし、必要な市民活動が停滞することないように、また新たな課題にも対応できるように、2020年4月24日から毎月1回、北海道内の中間支援組織の有志はオンラインで相談を重ねながら様々な活動を行ってきました。これまでの私たちの活動をご紹介します。
参加団体
NPO法人北海道NPOサポートセンター(幹事団体) 、NPO法人旭川NPOサポートセンター、NPO法人北見NPOサポートセンター、NPO法人NPOサポートはこだて、NPO法人北海道市民環境ネットワーク、ひがし北海道市民防災サポート、NPO法人室蘭NPO支援センター
北海道内のNPO等を対象としたアンケートを実施しました。
〈第1回〉新型コロナウィルス感染症拡⼤に関するNPO 等団体への緊急アンケート(回答 期間︓4/24〜5/15)
(北海道NPOサポートセンターHP)
〈第2回〉新型コロナウィルス感染症拡⼤に関するNPO 等団体への緊急アンケート(回答 期間︓7/22〜8/14)
(北海道NPOサポートセンターHP)
ワクチン接種が進む中、3回目の緊急メッセージを発信しました(2021年8月11日)
新型コロナウイルス感染症流行下における北海道の市民活動の継続に向けた緊急メッセージ
(北海道NPOサポートセンターHP)
記事作成
三木真由美(みきまゆみ)
NPO法人室蘭NPO支援センター