団体からのお知らせ・インタビュー
[インタビュー]トラブルの受付と講座の開講は事業の両輪~消費者支援ネット北海道 大嶋さん・小森さん
NPO法人消費者支援ネット北海道
成年年齢引き下げに伴う若年者向けの消費者被害防止のための事業
(令和5年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 まちづくりの推進分野)
消費者支援ネット北海道は、不当な勧誘や不当な契約で被害を受けた消費者に代わり、差止請求訴訟を行なうことができる適格消費者団体として2010年に認定を受け、活動を行ってきました。並行して、消費者のための教育・啓発活動にも取り組んでおり、教材の作成やセミナーの実施、地域における消費生活協力員養成講座などを開催してきました。
今回は、理事で消費生活アドバイザーでもある大嶋明子(おおしまあきこ)さんと小森公一(こもりこういち)さんにお話を伺いました。
※右写真:インタビュー時の様子。左から大嶋さん、小森さん
全国に4団体しかない特定適格消費者団体のひとつ
― まず、どのような活動をされている団体なのかを教えてください
2007年に国が一定の要件を備えた消費者団体に対して、消費者に代わって訴訟を起こせるという「消費者団体訴訟制度」が導入されたのを機に、差し止め請求などができる権限を持った「適格消費者団体」というものができました。そこで、この適格消費者団体になることを目指して、北海道生活協同組合連合会(北海道生協連)・北海道消費者協会が幹事団体となって、法曹界などの各方面に呼びかけて作った団体が、私たち消費者支援ネット北海道(ホクネット)です。これまでに、事業者に対して法に基づく申し入れを延べ200件近く(事業者数で約180社)に行ってきました。
2016年に消費者裁判手続特例法が施行され、「特定適格消費者団体」による被害回復の訴訟が可能となりました。消費者裁判手続特例法に基づき消費者が受けた被害について、訴訟と裁判手続きを行うことで、直接的に消費者の被害回復ができます。私たちは、2021年にこの特定適格消費者団体を全国で4番目※に付与されましたが、これはとてもハードルが高く、認定までの道のりがかなり大変でした。
※2023年10月現在、東京都・大阪府・埼玉県の消費者団体1団体ずつが取得しています。
― 弁護士や法律学者などの専門家はどのように協力されているのでしょうか
適格消費者団体に認定されるには、消費者が受けた被害を消費者から通報を受けて消費者関連法に基づいた検討をする部門を設けなくてはいけません。そのためには、理事などの役員として団体に在籍している者以外にも、法律家、弁護士、司法書士、法学の先生と、現場の情報として消費生活相談員による検討部門を作り、申入書を作成するとういう流れになっていますので、常に専門家と協力しながら活動を続ける必要があります。
― 通報の状況はいかがですか?
これまでもずっと通報を受け付けているのですが、ちょうど「特定」の認定を受けた前年に、通報が3倍に増えたことがありました。消費者センターからの紹介の方が多いのですが、情報提供を受けて団体として動くというようなことを消費者センターがある程度説明してくれるので、通報してくれる消費者が少しずつ多くなってきました。相談機関としての看板もありますので、「こういう相談があるんですけど……」と言って来られる消費者もいます。その場合はお話を聞いた上で消費者センターをご案内することもあります。
若年層に寄りそう支援を展開
― 今回の助成事業についてお伺いします
「成年年齢引き下げに伴う若年者向けの消費者被害防止のための事業」になります。私たちも毎日のように消費者トラブルに関した通報を受けていますが、その中でも特に、若年者の副業や脱毛エステサロンなどによるトラブルでの通報というのが一定数あるので、専門家の担当者を置いて対応しようということで申請しました。
受け付けた通報をもとに、大学や専門学校などに対して、学生さんたちがこんなトラブルに遭っていないかといった情報をお互いに交換し合い、講座を開催しています。通報の受付だけだと受身的ですが、講座は先手を打つためのもので、通報で実態を聞きながら、これまでに2校で学生向けの講座を開催しました。トラブルの受付と講座の開講は事業の両輪となっています。
― この事業を行おうとした背景や理由をもう少し詳しく教えてください
特定適格消費者団体になってすぐに始めたのが、脱毛エステサロンの問題でした。消費者センターからの情報提供もあったのですが、脱毛エステサロンのトラブルは、事業者の経営が傾いていたにも関わらず、永久脱毛と謳い一括前払いで30~40万円という高額な金額を請求し、実際にはそのサービスを受けられなかったというものでした。
事業の譲渡先には消費者への債務を一切引き継ぎすることなく、消費者への対応はしないどころか営業実態もなく、破産せずに何もしていないという状況だったのです。言ってみれば、私たちではどうにもならない状況でした。ただ、未だに「どうしたらいいのか」と、若い方を中心に通報があるのですが、そうなってしまうともう解決できません。受身だけでは消費者トラブルは減らせない、啓発も同時にやらなければいけないと思いました。
若い方には少しでも良いので「こういう事例があった」ということを聞いていただければと思う気持ちが強くあります。
― 実際に講座を進めてみた感想や手応えをお伺いします
講座では、実際に投資詐欺やクレジットカード詐欺などの実例を交えてお話をしています。一般の方だと、聞きたくて来られるので一生懸命聞こうとしますが、学生向けだと身に覚えのある人は耳を傾けてくれるような感じがするものの、自分には関係ないと思ってる人は話を聞いてくれないといった部分で難しいなという感じはありました。ですが、最後の方では質問も出てくるなど、それなりに手応えがあったのかなと思っています。
自分には関係ないとは思わないで。一緒に消費者被害を防ぎましょう
― 若い方を含めてメッセージをお願いします
トラブルは意外と身近にあります。自分には関係ないみたいに思っている人もいますが、今は関係なくてもいつトラブルに巻き込まれるかわかりません。要するに悪質業者はプロなので、話がうまいから誰でも騙されます。だから自分は関係ないと思わないで、しっかり学んでおいてほしいと思います。
― こちらの活動に関わりたいという人はどのような関わり方ができますか?
ボランティアはいつでも募集しています。一緒に法的検討を行う場では、専門家と専門家による非常に高度な議論に接することができますし、民法や特定商取引法などの身近な法律に基づいて解釈するという、滅多にない実践の機会です。特に弁護士になりたての方には勉強になると思います。裁判で争うには理論武装が必要です。委員会ではいろいろな方向の考え方をそれぞれが出し合うので、解釈の仕方はとても勉強になると思います。これから法律家を目指す学生さんなどは、ぜひ当団体へ来てください。いい勉強になりますし、ぜひ一緒に活動して消費者被害を防ぎましょう。
インタビューを振り返って
消費者支援ネット北海道さんは、全国的にも4つしかない特定適格消費者団体として、これから活動がますます増えていくと考えておられ、今回のさぽーとほっと基金の伴走支援では、ICTを活かした事務作業の効率化を目指しています。相談内容も時代に応じて急速に変化する中で、組織運営においても新しいやり方を模索する姿勢に感銘を受けました(高山)
インタビュアー
高山大祐(たかやまだいすけ)
北海道NPOファンド
※インタビューは、2023年8月22日消費者支援ネット北海道事務所にて行いました。