団体からのお知らせ・インタビュー
[座談会企画]旭川・釧路・登別より~この半年間・これからといま(1)
2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大とその対策のため、北海道内のNPO・市民活動も、「交流」や「集まること」への心理的なためらいや不安により、休業や自粛、良し悪しの判断すら難しい選択を迫られました。一方で、行政の支援施策や民間資金支援の対象は、緊急的な対策や、感染拡大を起因とする損害の回復を主たる目的とし、NPO・市民活動・地域活動の従来の活動への支援は多くはありません。
コロナウイルス感染症の拡大以前から、地域において必要とされている活動は、どのような岐路に立たされたのか。また、「活動をゼロにしない」ように、どのような工夫や試行錯誤があったのか。今回の座談会では、北海道内3ヶ所をつなぎ、『コロナ禍』と称されたこの半年間を振り返りつつ、活動の状況などを伺いました。皆さんの地域での活動の参考や、新たなネットワークづくりのきっかけになることを期待します。
※この企画は2020年9月30日に開催しました。3回に渡って記事を掲載します。
右写真:コロナ禍以前のまちなかぶんか小屋(歌声喫茶の様子)
スピーカーの皆さん
◆竹田郁(たけだかおる)さん
旭川 まちなかぶんか小屋 (コミュニティスペース・文化芸術)
◆新井田祐子(にいだゆうこ)さん
釧路 I am hereの会(障がい者自助グループ)
◆磯田大治(いそだだいじ)さん
登別 NPO法人おにスポ(総合型地域スポーツクラブ)
◆進行 佐藤綾乃(さとうあやの)NPO運営サポート・あの屋
― まず、皆さんの活動について教えて下さい
竹田:旭川の中心部に『まちなかぶんか小屋』というトークショーやワークショップ、演劇・落語・映画など、文化にまつわるスペースを運営しています。
新井田:釧路を拠点に障がいのある人が集まり、自分たちが住むまちのために「自分たちでも出来ること」、「自分たちだかこそできること」を考え、ピアサポートや学習会を開催しています。
磯田:登別で総合型地域スポーツクラブを運営しています。スポーツサークルや運動ひろば、健康指導などを行っていますが、東日本大震災以降は、災害時に動ける体制作りにも力を入れています。
[これまで]コロナ禍の半年間を振り返って
― 最も大変だった時期の状況、困ったこと、悩んだことを聞かせてください
磯田:実は、運営上でヒト・モノ・カネのダメージを一番受けているタイミングにコロナの影響を受けました。
今までどんな困難も自力でなんとかしてきたけれど、今回はどうにも頑張りようがなかったことが、一番困りました。家にこもっているしかできず、唯一、高齢の会員へ電話で様子を伺うことしかできませんでした。
社会全体で見ると、子どもたちへの影響が大きいように感じました。思いっきり遊べないなどのストレスですね。委託事業でグランド整備を行っていましたが、親子が遊んでいる様子も「大丈夫なのか?」と不安視する雰囲気があり、かわいそうでした。
コロナ禍以前~おにスポキッズサッカーの様子
竹田:ようやく落語会などの定期イベントが定着し、集客も見込めるようになってきたところでコロナに。イベントやスペース利用がゼロになりました。自主開催のイベントは対象年齢層が幅広いですが、歌声喫茶など、お互いの安否確認や交流の場となっていた企画がまったく出来なくなってしまいました。
最も困ったのは、支援給付が受けられなかったことです。市から家賃補助が出ているのですが、運営は主に貸スペース収入と会費で賄っています。持続化給付金を申請しようとしたのですが、任意団体なので申請ができず、文化庁など他の補助金も検討しましたが、どれも任意団体では申請できず、今も困っています。
新井田:年に4回、まちづくりや障がいのことを学ぶ学習会を企画しています。3月も予定していましたが、断念せざるを得ませんでした。講師の方などへ、中止と連絡するのが申し訳ない気持ちで一杯でした。自助グループとして活動しているので、活動資金面では大きなお金は動かないものの、障がい者就労で短時間で働くメンバーは、事業所の仕事自体がなくなるなど、収入面で大きな影響がありました。発達・身体・精神と障がいにも色々とありますが、中でも精神障がいの方は、コロナによる不安が大きく、色々と悩んでいた方も多かったです。また、見落とされがちなのが、内部疾患や難病の方への影響が大きいということです。罹患すると命に関わるものなので、周囲もとても気を使っています。
コロナ禍以前~ピアスタッフとの交流の様子
― 春先は外出できない状況が続いていましたが、活動やまちの状況が変わってきたのはいつ頃でしょうか?
磯田:日本スポーツ協会と文部科学省、北海道スポーツ協会が、ガイドラインなど徐々に情報発信していたので、8月末ぐらいから子どもたちの活動は再開しました。高齢者向けの健康活動は、クラブ判断で実施しようとしても、ご家族から心配の声が上がり、再開当初は1割ぐらい、現在も半分ぐらいの参加にとどまっています。
新井田:活動再開は夏ぐらいでしょうか。春先は事業所自体がすべて在宅勤務で、部屋から出られない状態でした。6~7月から徐々に事業所で勤務できるようになって、再開するにあたって少ない予算からマスクや消毒液を購入しました。体温計をいただいたりもしました。すべての活動で、参加者に氏名や連絡先を書いてもらっています。まだまだ油断はできないですね。
竹田:旭川では4月中旬から7月中旬までは感染者がほぼ出ていない状況だったので、6月中旬ぐらいから人出が増えて来ました。イベントは6月頃から再開しました。落語家の方から、「この(イベント自粛の)状況を続けてもしょうがないので、落語会やってみないか」と背中を押してもらって、換気とマスク着用を徹底して踏み切りました。
ここに立ち寄る人は、実はコロナ以前よりも増えていて、自粛期間から行き場所・居場所が無いなどストレスを抱えていた人が増えていた印象がありました。現在は、他の行き場所もできたせいか、来訪される方の数は落ち着きましたね。
ー(2)に続きます。
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記事作成
佐藤綾乃(さとうあやの)
支援協議会事務局