団体からのお知らせ・インタビュー

2021 / 03 / 16  10:04

[インタビュー]関わるということ、集まることの重要性~はる 河西さん

[インタビュー]関わるということ、集まることの重要性~はる 河西さん

特定非営利活動法人はる
休校影響下の学びの保障をする4つの柱プロジェクト

休校措置など新型コロナウイルスの拡大の影響により、居場所の喪失や学びの格差が生じないための事業として、対面とオンラインの両面での無料学習支援と居場所支援、保護者相談、学習動画の配信を行っている特定非営利活動法人はるを取材しました。

 

はるでは、インクルーシブ教育を理念とする学習塾と障害児通所支援事業(放課後等デイサービス)を事業の中核として、フリースクールやコミュニティスペース等の運営を通して、子どもたちが社会の中で排除されることなく、自分らしく人とともに育っていく環境を整えるための様々な事業を行っています。代表河西良介(かさいりょうすけ)さんにお話を伺いました。

 

btn_01project2.gif教育と福祉をつないでいきたい

― まず、はるの活動について教えててください

私たちの活動は、元々は学習塾からスタートしました。いわゆる発達障害の子どもや、学力的に躓いている子ども、不登校の子どもの割合が徐々に増えていき、フリースクールの機能も持つようになってきたので、塾とフリースクールの一体的な事業形態をとるようになりました。

 

中央区の山鼻地区は、学習に対して意識が高いという地域性があります。そこからこぼれ落ちてしまった子どもの居場所と学びの場が必要だと考え、居場所や関わりを重視して、即効性のある薬ではなく、漢方薬を与えられる塾にしようと、2012年から「個別学習塾はる」として活動しました。学校や病院、福祉との連携を持ちたかったのですが、『塾』というのがネックとなっていたので、NPO法人化したのが4年目の2016年です。

 

塾を継続しながら、コミュニケーション、ケア、居場所づくりをより重視した支援をするために、2017年に放課後等デイサービス(以下、放デイ)も立ち上げ、現在3事業所・約200名の子どもたちが利用しています。放デイは、その子がその子らしく生きるための環境づくりや、勉強との向き合い方に力を入れています。常勤職員15人、アルバイト15人ほどのスタッフがいます。

 

コミュニティスペースは、塾や放デイ以外にも、インクルーシブな関わりが作れる”ハブ”としての場所が必要と考えました。残念ながら、コロナ禍では活動は休止しています。

 

学校との連携については、放デイを始めたら可能になりました。世界が開いたと感じましたよ。教育には福祉が必要です。虐待などの児童相談所案件もあれば、貧困もある。教育と福祉をつないでいきたいです。

 

 btn_01project2.gif『集まること』の重要性を、甘くみないで欲しい

― 今回の事業について、内容と経緯を聞かせてください 

私たちができることの中で、コロナ禍において貢献しやすいこと、チャレンジしたいことを組み合わせた事業となりました。子どもは肌と肌を接して成長していきます。オンラインだけではダメ。オンラインと対面支援との組み合わせが必要と考えました。

 

動画配信はチャレンジしてみたかったことの1つです。学校の再開とともにニーズが減りましたが、低学力層を対象に動画を制作しました。家庭支援は、コロナの中で閉塞感を持っている親御さんを対象に。夏休み期間中には、無料の学習支援を対面で行いました。新聞折り込みチラシなどで広報して、これまではるに関わっていなかった子どもが利用しました。

 

学習支援は、塾の枠組みの中に入れて実施したので、子どもにとっては「塾に行った」「新しい場所に行った」という感覚でしょう。塾の形態としては、子ども10人ぐらいの中に、先生が4~5人入るので、マンツーマンに近い形になります。発達障害の子どもたちは、保護者からニーズを聞いて、子どもたちに合わせた学習を行っています。継続を希望する場合は、料金がかかってしまいますが、話し合いの場、相談の場をつくることができました。

 

休校措置に納得が行かなかったんですよね。そのひずみは、必ず社会的に弱い立ち位置におかれる子どもやご家庭に影響してくる。学校側は一生懸命だったと思いますが、勉強にやっとついていっている子どもにとっては、何のサポートもない。また不登校の子どもたちは、休校期間が新年度をまたいでしまったので、良いスタートを切れなかったのではないかなと感じます。

 

スクールカウンセラーや養護の先生であったり、児童相談所や福祉の相談室などから紹介されることもあります。ぜひ、勉強や他者との関係性に難しさを感じている子どもたちに、私たちの活動を利用して欲しいです。そういう子どもたちが地域との関わりをもつことを重視したいです。普通の子どもでも、困難なことがあれば拾っていきたいと思っています。

 

― これまでを振り返っての感想や、新たに直面した課題について教えて下さい

いやー、難しいですね。例えば、福祉サービスの感染対策のガイドラインなどはありますが、子どもを対象として作られたものではないので、明確な基準がなく、曖昧なままやっている状態です。特に放デイは、感染者が出てしばらく休止するとなったら、経営的に厳しい。誠実に対応すればするほど、リスクが高く、スタッフの負担も大きいです。そんな状況下で、判断をしていくためのフィードバックをもらえないのはキツイなと感じています。

 

フリースクールも、居場所も、誰にとっても『関わる』ということが大事な場所です。オンラインで代替できるものではありません。関わるということ、集まることの重要性というものが、子どもたちの成長においてどのような影響があるのか、ちゃんと議論できていないのではないかと感じています。

 

『集まること』の重要性を、甘くみないで欲しいです。特に子どもは、感染源になり得るけれど、リスクは低い。妥協点はどこか。集まることの意義はなにかをもっと考える必要があります。

 

 

btn_01project2.gif子どもたちが求めるもの、良いものを広げていきたい

― 今後の活動についてお聞かせください

基本的には、子どもたちが求めるならサービスを増やし、良いものを広げていきたいと思っています。私たちの活動では、子どものニーズにあわせて、フリースクール・放デイ・塾を選ぶことができます。制度事業の放デイは利用できない子どももいるので、制度外のフリースクールや塾も合わせて受け入れられる体制を作り、インクルーシブな状態を作る。普通の子も発達障害の子も一緒に、「それ良いね!やってみよう!」って言う人が増えていって欲しいです。

 

はるでは『(スタッフの)人材不足』は、一時的にあっても長期的にはありません。塾は教員志望や福祉系の大学生アルバイトが多く、自分がやりたかったことを積極的に実践してもらうようにしています。その中で、学校で仕事をすること以外の選択肢を持つ学生も出てきて、はるで働きたい、思いをもって来てくれる子をスタッフとして受けているので、若いスタッフが多いです。

 

行政は、不登校の子どもたちの実態をちゃんと知った方が良いです。「不登校児の数」やフリースクールの実態調査を、数字上の把握だけではなくて、長期ひきこもりになる可能性やリスクを考えてもらいたいです。立て直せれば、社会生活を取り戻していく子どももたくさんいます。フリースクールの補助金はありますが、教材費などに紐付けられています。この仕事は、モノじゃなくてヒトが大事。人件費や研修費、訪問費用など、実態に合ったお金の配分をしていただきたいと思っています。

 

利用する方のお金の課題もあります。制度外のサービスでは利用料も発生するので、生活保護世帯はどうするのかなど、どうしてもお金の問題は出てきます。これまでは助成金はあまり活用していなかったのですが、今回(さぽーとほっと基金)のように、人件費に充てられるものがあれば、無料の学習支援の取り組みなどを、もっと広げられる可能性がありますね。助成金を活用しての取り組みは、どうしても単年度になりがちですが、継続した事業を展開していきたいです。

 

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インタビューはオンラインにて。にぎやかな子どもたちの声が時々聞こえました。
(上左・インタビュアー定森、上右・記録佐藤)

 

 

 

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インタビューを振り返って

塾という福祉とは一見異なる事業形態を取りながらも、「教育と福祉をつないでいきたい」という河西さんの熱い思いと、それを実践されていることが印象的でした。
河西さんが強調された「集まること」の重要性はコロナ感染症の影響が長引くなかで大事な指摘だと感じました。(定森)

 

 

インタビュアー 
定森光(さだもりひかる)
北海道NPOサポートセンター
※インタビューは、オンラインにて2020年12月24日に行いました。

記事作成
佐藤綾乃(さとうあやの)
支援協議会事務局

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