団体からのお知らせ・インタビュー
[インタビュー]座長・鈴木喜三夫とともに~座・れら 戸塚さん
座・れら
劇作家・山田太一作品を通じて考える超高齢社会と生きることと死ぬこと
(令和5年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 長内芸術振興基金助成事業)
座・れらは、札幌を拠点に新劇の伝統に立脚し、人の気持ちに寄り添い、人の心に響く良質な演劇作品を多くの人と共有しようと活動しているアマチュア劇団です。本業を持ちながら旗揚げ公演以来18回の本公演や若手の育成公演などをおこなっています。
今回は旗揚げメンバーで演出家の戸塚直人(とつかなおひと)さんにお話を伺いました。
※右写真:戸塚さん(座・れら事務所にて)
持続可能な演劇を目指す
― まず、団体の活動などについてお伺いします
職業演出家の鈴木喜三夫を中心に、2009年3月に4名で発足した劇団です。現在の団員は私のように仕事を持ちながら10名が参加しています。主な活動は演劇公演ですが、演劇誌「風」の発行を通じて、演劇を行うことはどういうことかの考察なども行っています。座名の「れら」はアイヌ語で「風」という意味です。観客を含めた参加者が納得し、高い満足感を得られるような持続可能な演劇を目指しています。
1931年生まれの92歳で道内最高齢の演出家の鈴木喜三夫は、民主的に舞台つくりを進め、「俳優がいかに舞台で生きられるかを手助けするのが演出家の仕事だ」と言います。そのため稽古場は常に和やかな雰囲気です。
生き死にを共に考える機会を、芝居で
― 今回のさぽーとほっと基金の助成事業についてお伺いします
超高齢社会を我が事として捉え、いかに生きて、いかに死ぬかということを、山田太一作品を通じて考えるため企画しました。8月にはプレ企画として鈴木喜三夫が演出の山田作品の紹介と山田太一作『林の中のナポリ』の試演会をおこないました。10月には文化芸術交流センターで同様の企画を実施しました。12月1~3日には座・れら第19回公演『林の中のナポリ』を計5公演おこないます。
『林の中のナポリ』は、客足が途絶えた高原のペンション「林の中のナポリ」にたどり着いた高齢女性が主人公です。高齢女性の生き様を軸に周囲の人々の思いが浮き彫りになっていく山田太一ならではの作品です。とても良い芝居に仕上がっていますので、ご期待ください!
演出家鈴木喜三夫と劇作家山田太一を語る会と『林の中のナポリ』公開稽古(10月28日)の様子
座・れら第19回公演『林の中のナポリ』(本公演)より
気づきを共有できる芝居を多くの人に知ってもらいたい
― 今年度は支援協議会が伴走支援を行っていますが、特に期待していることをお聞かせください
運営の基本は入場料収入ですが、赤字のときは団員が補っています。良質な作品つくりにはどうしても経費がかかり、多くの公演は赤字で、運営はうまくいっているとは言えません。観客動員のために外部に発信していく効果的な方法があれば教えてほしいです。助成金の申請についてもアシストしていただけると助かります。
― 今後の活動について教えて下さい
コロナ下では、演劇など文化芸術は生活に必須ではないと思われたようで、多くの公演等が中止に追いやられました。ほんとうはなくてはならなかったと思います。人は食べ物だけで生きられるわけではありません。芝居づくりは気づきの連続です。私たちが気づいたことを、できれば皆さんと共有したいと願っています。ホームページやSNSも充実させたいと思います。
インタビューを振り返って
私にとって劇団のイメージは、大学に結びついていて、そのためか、活動は難しい理論に支えられているのだろうなと思っていましたが、観る側によって気づくところも異なる、気づきの機会としての演劇のことを、分かりやすくお話ししていただきました。コロナ感染症の時期に、当たり前のことが当たり前でなくなったときに、何が大事であったのかに気づかされることもありました。そのような気づきの機会をつくる活動がこれからますます必要になると感じました。(高山)
インタビュアー
高山大祐(たかやまだいすけ)
北海道NPOファンド
※インタビューは、2023年9月23日に座・れら事務所にて行いました。