団体からのお知らせ・インタビュー

2023 / 06 / 22  11:52

[インタビュー]コロナ禍・コロナ後において懸念される孤立や認知症を予防する~ふまねっと 尚和さん

[インタビュー]コロナ禍・コロナ後において懸念される孤立や認知症を予防する~ふまねっと 尚和さん

NPO法人ふまねっと
孤立や認知症を予防するオンライン交流型体操教室とICTスキル向上説明会事業
(令和4年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 新型コロナウイルス感染症対策市民活動助成事業)

 

NPO法人ふまねっとは、子どもや高齢者が生き生きと健康に暮らすことが出来るよう、だれもが参加しやすい運動プログラム「ふまねっと運動」の開発やボランティア養成、健康づくりの機会を増やすためのネットワークの構築に継続して取り組んでいます。
今回は、副理事長尚和里子(しょうわさとこ)さんにお話を伺いました。

※右写真:尚和さん

  

btn_01project2.gifオンラインで誰でも参加できる教室と体験説明会

― 今回の助成事業について教えて下さい

孤立や認知症を予防するオンライン交流型体操教室とICTスキル向上説明会です。具体的にはコロナ禍、あるいはコロナ後において、懸念される孤立や認知症を予防するという目的で2つの事業を実施しました。一つは、自宅で参加できる交流型の体操教室をオンライン配信して、皆さん一緒に交流しましょうというものです。もう一つが、そのオンラインサービスに不慣れな方も多くいるので、ICTスキルを身に着けてもらい、パソコンやスマホでYouTubeやZoomを利用して参加してみましょうという、きっかけ作りのような実習型の説明会です。

オンラインで行う体操教室の方は、平日朝9時から1時間、YouTubeとZoomを使って配信し、どなたでも無料で参加できるようにしています。ふまねっとのスタッフとボランティアの皆さんにご協力いただいて、毎日皆さんと一緒に体操をしたり、参加者の方からお話していただいたり、終了後に感想を発表してもらったりしています。私たちは対面のときも交流を大事にしていますが、オンラインであっても画面越しにハイタッチをしたり、うまくできたかどうかお互いにフォローし合うなど、いろいろな交流の機会を作るようにしています。

オンラインサービスを利用するためのICTスキルの説明会の方は、広く周知したいと考え、札幌市内全区の区民センター等で体験説明会を行いました。インターネットを使った体操のやり方を一緒に体験し、その後オンラインでの利用方法について説明しました。オンラインに不慣れな方は、スマホを持っていてもうまく使えないという方もたくさんいらっしゃいます。作成した資料をもとに説明し、実際に通信してデモンストレーション的にお伝えすることで、少しずつオンラインに対するハードルを下げるような取り組みを行いました。一回あたり大体90分程度で、元々40回の予定でしたが、コロナ禍で人数が少ないときもあったので、もう少し追加して実施しました。 

 

 ― この事業を実施することになったきっかけや経緯について教えてください

今まで私たちの法人はボランティアを育成して、そのボランティアが地域で健康教室をやるという形で広げてきたのですが、ボランティアメンバーも高齢な方が多く、自粛されるケースもありました。各地でサロンや教室が中止するようになり、参加していた地域の人たちが寂しくしているという声を電話で聞いていました。また、健康状態や認知症の悪化を心配する声が、ボランティアから上がるようにもなりました。一方で、他者と交流する機会が極端に減って、教室を再開してもご本人の判断で自粛されるシニアの方も多くいらっしゃったため、孤立や孤独の問題がかなり深刻化している中、今すぐに取り組めることはないかと考え、オンラインで誰でも参加できる教室を開きましょうとなりました。それまでは間接的なサポートが中心だったスタッフたちも、直接オンラインでサポートするようになりました。

また、オンラインで誰でも参加できる健康教室をやろうということで始めましたが、オンラインに不慣れな方多かったため、やはり丁寧に説明し、知ってもらう機会を作らないと参加者も増えないだろうと考え、各地での説明会も開催することになりました。

11.26北区体験会.PNG 
北区での体験会の様子(22年11月)

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厚別区での体験会の様子(22年12月)

 

btn_01project2.gifオンラインでもやらないよりはずっと良い

― 事業に参加された方の感想はいかがですか?

ボランティアの皆さんのことを、私たちは“サポーターさん”と呼んでいます。サポーターさんとの交流会が月1回程度、各地区で実施しているのですが、最初はその場に行って、こういった事業をやるので皆さんご協力お願いしますと説明したのですが、もう『オンライン』と言われただけで拒否反応を起こしていましたね。やはりシニアの方が多いのでオンラインは難しいし、対面の交流に勝るものはないと思う、けれども今はそれができない、オンラインでもやらないよりはずっと良い、とサポーターさんに説明しました。

最初は少なからず抵抗がありましたが、分かりやすい資料を用意して、少しでもきっかけになれば良いんですよと説得しました。これまで教室を開催していた皆さんに理解されないと、参加者の皆さんにもうまくおすすめできないと考えたので、まずはサポーターさんに理解してもらうことを重視しました。また、参加する方たちには、オンラインに対する興味だけでなく、オンラインツールを使えないとしても、家の中でちょっと面白いことができるんだよ、ということを一つの参加動機になればと考え、家でも新聞紙でふまねっとができるものを作りました。それ自体がなんか面白そうだねと、そこから興味を持ってくださったサポーターさんが増えて、地域の人にもおすすめしてくれるようになったのかなと思います。

体験説明会を実施していく中で、スマホを持っていない方や、持っているけどインターネットはよく分からないし怖いという方には、DVDを渡したところ自宅でやり始めたという方も結構いらっしゃいました。また、徐々に地域の健康教室も再開してきたため、新たに地域の教室に繋がったケースもありました。

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オンラインでの体操教室の様子

 

 btn_01project2.gif丁寧なサポートがあれば徐々にステップアップして解決に至っていく

― 運営上の課題や、今後の展開についてお聞かせください

オンラインに関してはまだまだ継続的な取り組みが必要です。高齢者の方のオンラインに対する慣れを広げていくためには、私たちの団体だけでなく、同じような取り組みを行う団体が増えていくと良いなと思っています。行政の方でも、『デジタル支援員』のような取り組みを、今後も展開するかもしれませんが、おそらく行政の公的サービスの力だけでは間に合わないと思います。町内会でも高齢者のデジタル支援に関する取り組みを実施されていると聞いていますので、NPOや町内会など多様な主体が社会課題の解決をできるようになっていくと良いなと思います。

オンラインで言えばシニアの人たちは弱者にあたりますが、きっかけがあり、やりたいと思える動機があり、丁寧なサポートがあれば徐々にステップアップして解決に至っていくんだなということは、とても感じています。それ自体が本人にとっては大きな自信になります。オンラインが使えるようになってびっくりしたという人、参加できるようになって毎日の生活の張りになっていますと喜んでくれる人などを見ると、活動が広がることで、助かる人もたくさんいるんだなということも感じました。

孤立死や自殺する人が増えている、健康状態が悪化している人が増えている、という社会状況の中で、行政の力だけでなく民間の力、こういった寄付による支援や直接ボランティアとして活動してくださる人がいて、そしてそれを進めていく団体が多くなれば、様々な社会問題が解決していくのではないかと思います。ぜひ、こういう取り組み、そして寄付などの支援がどんどん広がっていくといいなと思います。

 

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インタビューを振り返って
コロナ渦において多くの地域活動が行き詰ってしまった中で、オンラインを用いた新たな取り組みとして、多くのボランティアさん(札幌市内で500人ほど!)ととても丁寧にコミュニケーションをとりながら事業を進められていました。オンラインでの取り組みであったからこそ、高齢のボランティアさんや参加者さんが新たなことに挑戦出来たということは大きかったと思いますし、オンラインでつながり続けたからこそ、対面での活動再開も徐々に期待できるかと思います。4月以降もボランティアさんと役割分担をしながらオンライン配信を続けていくことを検討されているとのことで、高齢になっても社会的役割を持ち、担い手として活動できるということを伝えていきたいとお話されていたのが印象的でした。(中西)

 

インタビュアー 
中西希恵(なかにしきえ)
北海道NPOサポートセンター
※インタビューは、2023年3月2日オンラインにて行いました。

 

 

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