団体からのお知らせ・インタビュー

2022 / 10 / 12  09:28

[インタビュー]地域の子どもたちに色んな出会いを届ける E-LINK 日向さん

[インタビュー]地域の子どもたちに色んな出会いを届ける E-LINK 日向さん

NPO法人E-LINK

お寺で寺子屋~みんなの居場所~
(令和3年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 子どもの健全育成事業)

札幌の子どもたちが、遊びや学び、生活のサポートをしながら、多様な大人との出会いをサポートする活動を行っているNPO法人E-LINKを取材しました。

活動拠点である札幌創成東エリアは、子育て世帯の人口増加が著しく、児童館や学童保育等は、定員が飽和状態。加えて、小学校高学年から中学生世代が無料で過ごせる居場所や公園も十分とは言えません。地域の方々が関わり合い、子どもを支える新しい居場所としての『寺子屋』の活動に取り組んでいます。

今回はオンラインにて、理事長日向洋喜(ひむかいひろき)さんにお話を伺いました。

 

 

btn_01project2.gif『なまら、ツナガル』

― まず、E-LINKの活動について教えてください

2019年にNPO法人として発足しましたが、活動は2017年から大通のバスセンターエリアで学童保育「アドベンチャークラブ札幌」として行っていました。子どもがいろんな大人と出会う場所にしようと、ゲストハウスの一角を借りて、『世界と出会う、放課後スクール』として主に小学生が放課後に過ごす場所として実施していました。ゲストハウスを利用する初めて会った兄さん・お姉さんたちと交流しながら、大学のことや日本一周というような様々な体験談を聞き、カメラやバイクでの旅に興味を持つことや、子どもたちの夢の可能性を繋げる機会にもなりました。

もっと色んな子どもにもアプローチできるよう、2019年にフリースクール「LIKEPLUS」を開設しました。今日は札幌国際短編映画祭の運営の方に来ていただき、映画の解説をしながら、子どもたちに話をしてもらっています。不登校児への支援として始めましたが、対象をもっと広げ地域の子どもたちに色んな出会いを届けるために、NPO法人化しました。

『なまら、ツナガル』がミッションです。田舎のような都会、都会のような田舎『TOKAINAKA』を作っていこうと思っています。ここは札幌の大都会で、テレビ塔が目の前にあって、新しいビルやマンションが立ち並んでいるけれど、実は100年以上経つお寺や神社、昔ながらの商店街もすぐ近くにある、新旧が入り混じった場所です。子どもたちも増えている地域ですが、地域のお店や元々住んでいる人のことをあまり知らない。子ども中心につながる社会を作っていこうと活動しています。

実際に学童保育の活動の中で、子どもたちがお寺に遊びに行ったり、地域のお店や会社を訪問することで、いつの間にか子どもたちが学校帰りにそのお店に立ち寄って挨拶していたり、住職さんの雪かきを手伝っていたりしていました。一度顔見知りになったら、一気に距離が縮まるんですよね。お互いに知ることで、街での暮らしが変わるんじゃないか、都会だけれど、田舎のような関係性が作れるんじゃないかと考えて活動しています。

今年度から、「寺子屋プロジェクト」を始めました。元々お隣さんだったお寺から、もっと地域に開かれた『寺子屋』をやりたいんだよね、というお話がきっかけで、一緒にやることになりました。

毎週木曜日に申込など不要で、公園のように訪れる場所としてお寺に遊びに行っています。月1回地域食堂も実施しています。最近は、“ごちゃまぜ開催”ができるようになってきました。土曜日に開催しているので、ライオンズクラブさんなど地域の団体の協力を得て、境内の掃除などのお手伝いもしながら、子どもも大人も無料で50人ほどが参加しています。

他には、親子の居場所づくりにも力を入れていて、プレーパークや、お母さん向けの交流会を開催したり、神社のお祭りに参加したり、昨年から実施しているハロウィンイベントでは、近隣のお店25店舗ほどに協力をしてもらい、約200人が参加しました。街を歩いて、お店を知る・お店の人を知ることを大事に、地域全体で『なまら、ツナガル』ということに取り組んでいます。

2022年4月からは、「探求学習塾 maku-link(まくりんく)」も始動しました。
居場所・きっかけ作りを”自分の学びに変える場所”として、別の拠点で実施しています。
詳細・紹介ページは
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  btn_01project2.gif『身近』に感じられる地域の居場所

― 今回の助成事業について教えてください

先程お話した北海寺を会場にした「お寺で寺子屋」を実施しています。毎週木曜日の放課後に、子どもたち20人ぐらいが参加しています。大学生が中心になって運営していて、“子どもたちが新しい人を知る”をテーマにしています。ただ『間近』にいるだけじゃなくて、自分事として捉え、『身近』に感じられる地域の居場所というのを大事にしています。子どもたちはそれぞれ自由に過ごしながらも、元々お寺に来ていた人の中には、子どもたちのために塗り絵や、パンやおやつを用意してくれる方もいらっしゃいます。

 

この一環として、地域食堂を実施しているのですが、12月11日(土)の様子を、たまたま来てくれていたカメラマンが動画におさめてくれました。いずれ、Youtubeチャンネル等で公開したいと考えています。

E-LINKのYou Tubeチャンネル
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私たちが「子ども食堂」ではなく、「地域食堂」と言っているのは、本質的には誰が来ても良い、大人同士も繋がってほしいと思っているからです。実際に先日のイベントは、子ども20人に加えて、中高大学生、ライオンズクラブの方、保護者の方も参加して、多世代のイベントとなりました。ゴミ拾いもおこなったので、環境の活動を行っている方にも来てもらって、最後にプロジェクターを使って環境クイズなども取り入れ、本当に様々な方に協力いただきました。これまでは木曜日の活動の一環として、毎月最終木曜の夜に開催していたのですが、今回初めて土曜日にイベントの形で開催してみました。

 

元々、大学生のメンバーが中心となっていたので、ボランティアは大学生からの口コミやつながりから始まりました。開始当初にNHKで紹介されたことによって、ライオンズクラブなどの協力を得られるようになり、地域食堂のチラシに毎回お手伝いの募集もしているのでご協力いただける方が増えていきました。

 

 ―  地域の人たちの反応や、地域の変化はどのように感じられますか?

学童保育からのつながりや口コミで広がっていったのですが、今はコロナの影響で遊ぶ場所が減っているので、こういう場所で子どもたちが遊べるのはありがたいという声は届いています。別の事業で、町内会とのつながりも作っているところですが、頑張ってるね、という声掛けをたくさんもらっています。

ただ、本来は町内会の協力を得たいと思っています。しかし、町内会としてのイベントがみんな中止になっていることもあって、町内会として関わるのは建前的に難しく、理解も応援もしていただいていますが、心苦しいなぁという思いです。個々のお店や可能な範囲で協力をしてもらっていますが、ここはコロナが明けるまでの辛抱かなと思っています。

現在のバスセンターエリアは、大きなマンションが立ち並んでいて、今もどんどん新しいマンションが建設されています。3〜4年前ぐらいは400人ほどだった小学校の児童数が、今では600〜700人になり、子どもたちが増えているエリアです。ただ、都市部ということもあって、放課後は塾や習い事に行っているのか、地域の中ではあまり子どもたちの姿は見えません。お祭りのときなどに、「こんなに子どもがいるんだ!」と驚くぐらいです。

公園も2・3か所しかないので、そこに小学校高学年ぐらいの子が集まる印象です。お寺に来ている子どもは、「持て余している子ども」が多い印象です。共働きのこどもが多いのかな。家に居ても一人で、時間を持て余している。公園で遅くまで過ごしてしまう子が多く、治安的な不安もあります。だからこそ、お寺という場所で、安心して過ごせて、地域の人とのふれあいが出来れば、夜帰り道になにかあった場合でも逃げ込めるようなつながりができれば良いと思っています。

 

btn_01project2.gif居場所は居場所としてしっかり残したい

― コロナ禍において、活動への影響はいかがでしょうか?

活動内容は大きくは変わっていません。一番大事にしているのはツナガルということなので、なるべくリアルでという思いがある中で、じゃあどこまで集めたらいいのか、食堂やるにしても、定員を設けるのか、食べる順番、声の掛け方についてはとても頭を悩ませたと思います。

地域食堂の初回は、注文を取ってお弁当で提供しました。でもそれだと、自分たちが行おうとしている目的(地域の人達とつながる)とはやっぱり違うという話になり、2回目は外で食べようとなり、バーベーキューの形にしました。そこでも時間を区切って、交代制の形で開催したのですが、やるかやらないかの判断は難しかったです。

学生や若いスタッフばかりであれば、オンラインで計画を立てて、決行するにしても中止にするにしても、やりとりはスムーズですが、地域の人とは連絡手段は電話であったりするので、タイムラグや伝えきれないことが多々あったのかなと思っています。

現在は感染症の状況が少し落ち着いていますが、状況がまた悪化したとしても、子どもたちの動きとしてはあまり変わらず、居場所は居場所としてしっかり残していきたいという思いがあります。ただ、その中で地域の方が来るイベントや地域食堂の開催方法は、検討していく必要があるのかなと思います。

 

― 運営上の課題や、今後の活動について聞かせてください

運営上の課題としては、予算とマンパワーです。いろんな人のつながりで、やりたいことは広がっているけれど、現在の体制(常勤3名)では余力が無くなってきています。これまでは助成金はあまり活用せず、事業収益や寄付金がメインでした。助成金は新しい事業を行わないとならないイメージがあったので、人件費や運営に活用できる助成金があればとは思っています。

コロナ以前からLINEを活用していて、コロナ禍でもコミュニケーションには支障はありませんでした。スタッフ・ボランティア・サポーター・寄付してくれている方のグループがそれぞれあります。学童保育とフリースクールは活動後、個別に全保護者に報告を送っています。サポーターにも定期的に、活動報告や今後の予定を送っていて、よくコミュニケーションが取れていると感じます。

よくある手書きの連絡帳だと、どうしても時間が取られるし、保護者の方も大変。LINEだと誰しもが使えるツールになっているので、双方向でやりとりしやすくなりました。保護者の方は「返信いらないですよ」と言っても、フィードバックくれたり、自宅での様子を伝えてくれたり。学生もボランティア情報を拡散してくれたりしています。お便りもLINEでお送りしていて、イベント情報を載せたチラシも画像だと見てもらいやすく、情報の拡散に協力してもらえるので、なるべくLINEを活用するようにしています。

以前のゲストハウスの建物は、オーナーが高齢で取り壊すことになり、(2021年)7月に移転しました。とはいえ、小学校1年生が歩く距離を考えると、場所を大きく変えるわけにはいかないので、小学校近隣を探していたので、物件探しには時間がかかりました。新しい拠点は4階建ての建物の2階です。1階がカフェ、3階がコワーキングスペースなので、地元の人とのつながりを作るには理想的な環境かなと思います。カフェには、ハロウィンイベントでも協力いただいて、子どもたちがお店の方にお手紙を書いたり、お花を届けたり、ハロウィンのおばけかぼちゃを飾ってもらったりといった関わりが作れています。コワーキングスペースを利用している方からは、おやつをもらったり。以前の場所から徒歩3分ぐらいですね。いい場所に移ることができました。

子どもたちとの関係や、地域の中で子どもたちにアプローチする手段が、やっと出来てきたのかなと思っています。次はどこまで広げていけるか、というところですね。寺子屋に来ている子どもたちの学年の幅を広げる、もっと親御さんや町内会へのアプローチはまだできていないので、本当の意味での地域との繋がりを、団体としても、寺子屋の事業としても、広げていかなければならないし、そうなっていけるのではないかなと感じて、機会を探っています。

 

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インタビューを振り返って

 「田舎のような都会をつくりたい」という日向さんの言葉を聞いて、自分の子ども時代を思い出しました。札幌の中心部の社宅で育った私は、社宅の子どもたちと近所のお寺でセミの幼虫を探したり、近所の空き地で一日中遊んだりして、地域のおじさんおばさんたちとも自然にコミュニケーションをとっていました。E-linkさんは、今の時代に合わせて、都会の子に豊かな体験をもたらす素晴らしい活動をされていると思いました。(高山)

 

 

インタビュアー 
定森光(さだもりひかる)北海道NPOサポートセンター
高山大祐(たかやまだいすけ)北海道NPOファンド
※インタビューは、2021年12月13日にオンラインにて行いました。

 

記事作成
佐藤綾乃(さとうあやの)
支援協議会事務局

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