団体からのお知らせ・インタビュー

2021 / 09 / 27  16:41

[インタビュー]ピアに出会いたい、繋がりたい~holoholo ゆかりさん・みぃさん

[インタビュー]ピアに出会いたい、繋がりたい~holohol まつもとさん・粟津さん

holoholo
DVピアサポートで、対面でもリモートでもつながる仲間づくり事業
(令和3年度札幌市市民まちづくり活動促進助成金 HRMホールディングスグループまちづくり応援基金助成事業)

DV被害者は、当事者でなければ伝わりにくい辛さを抱えています。長年のトラウマを抱えながら、仕事も子育てもギリギリの状態で頑張っている。だからこそ、ピア(仲間)と繋がれる場が求めれます。コロナ禍により更に孤立感が高まっているDV被害者と繋がり、仲間の存在を感じあえる場を作ろうと、対面・オンライン・郵送を組み合わせた支援を行っているholoholo(ホロホロ)を取材しました。

holoholoは、DVやモラルハラスメントからの回復を目指す活動をしているグループです。2011年6月に札幌でスタートし、今年10周年を迎えました。今回は代表まつもとゆかりさん、副代表みぃさんにお話を伺いました。

 

 

btn_01project2.gif外と繋がることには、とても大きな意義がある

― まず、holoholo活動について教えてください

(ゆかりさん)
「同じ経験をした仲間と話したい」と思ったことをきっかけに、DV被害女性のためのグループとして、継続的に活動しています。現在の活動は、DVピアサポートグループ、DV講座「心のケアとサポート講座」、DV加害者プログラム、個別相談の4事業をメインで行っています。

昨年から、リモートでもできる活動を試行錯誤しながら実施し、やっと定着してきました。フードバンク等と連携しておやつ等の宅配も行っています。DVにあった女性たち、子どもたちが不自由なく社会生活が送れるようにサポートする活動なので、孤立防止の観点からも、対面での活動を大事にしたい思いがありますが、感染が怖いという声もあり、なかなか難しいです。ですから、お母さんや子どもたちにとっては、オンラインであっても、外と繋がることに、とても大きな意義があると思います。おやつの宅配は、やってみて、意外な効果がありました。子ども向けの取り組みと考えて始めましたが、思春期のお子さんがいる家庭にとっては、話題の1つを提供でき、コミュニケーションのきっかけにもなるという感想があったのです。もうお子さんが独立しているご家庭もありますが、外との繋がりが感じられて嬉しいという声をいただいています。

 

 ― コロナ禍になってから始めた活動は?

(みぃさん)
オンラインのピアサポートは、私がファシリテーターを担当しています。対面のピアサポートは月2回、オンラインは月に1回実施していて、だいたい4~5人参加しています。一人ずつ時間を決めてお話をしてもらい、批判やアドバイスはしないという約束を確認しています。毎回来ている方も、初めての方も、札幌以外、道外からの参加もあるのは、オンラインならではだと感じています。道外から参加される方は、DVで受けた辛い気持ちを吐露したくて、必死に調べて、探して来られるようです。

(ゆかりさん)
DVの相談窓口は各自治体にありますが、同じ思いをした仲間と話せる『ピアサポート』という場は、全国各地にそう多くはありません。holoholoから情報を届けているメールの登録は200人ほどいますが、経済的に厳しい方も多いので免除の仕組みもあり、会費を払って参加される方は一部です。

おやつの宅配は、会員を対象に行っています。外出制限が厳しい職種や環境の方、オンライン環境にない方などとの繋がりを保つための事業でもあります。フードバンクイコロさっぽろさん、おてらおやつクラブさんから、食品を提供してもらい、さぽーとほっと基金の助成金を送料に充てています。holoholoでは、最低限の個人情報しか提供してもらっていないので、おやつの宅配は希望者のみで、20-30程度の家庭に送っています。 コロナ禍以前から、オンラインでのサポートや食品支援は、様々な団体が取り組んでいましたが、holoholoとしては対面を大事にしていました。でも、やれることをやるしか無いと思い、さぽーとほっと基金の助成金も活用できたので、チャレンジしてみよう!となりました。コロナ禍での「家族で、自宅で過ごそう」と言う呼びかけにより、DVが増える、環境が悪化することはわかっていたので、完全に孤立してしまうよりも、オンラインでもいいから繋がりを残しておこうと考えました。札幌以外の遠方の方とも繋がれたのは、副産物ですね。これまで繋がれなかった人も参加できるようになって良かったです。 
※トップの写真は、おやつの発送作業の様子です。

 

 btn_01project2.gif人の命に関わる活動なのに

―  コロナ禍でのDVの状況は?

(ゆかりさん)
相談件数は確かに増えています。深刻な方も多いです。でも、本当にしんどい方たち、まだ一緒に暮らしているような、渦中にある方は、対面の場にはなかなか出てこられないですし、オンラインや電話相談は、家族に聞かれる可能性があるので難しいです。子どもがいる場合でも話しにくいですよね。団体の名前も一切出さないようにして、食品を送ったこともあります。

holoholoで受ける相談で多いのは、離婚調停中やシェルターを出たタイミングなどで、社会的な繋がりが途切れてしまった方が多いです。メールでの相談がメインですが、少人数でマスクをして対面や、オンラインでお話することもあります。会いたいという方が多く、訪問や同行も、必要に迫られて行うことも多いです。

緊急事態宣言中は、市内の公共施設が閉まってしまい、活動場所が確保できなくなりました。私たちの活動は、「不要不急」なんでしょうか?みんなボランティアですが、本来は自治体がやるような、人の命に関わる活動なのに、市の施設が使えない。コロナ禍だから、やらなくてよい活動ではない。コロナ禍だからこそ、やらなきゃならない活動があります。

 

btn_01project2.gif対面の活動はやめません

― これまでを振り返って、新たな発見や直面した課題はありましたか?

(みぃさん)
オンラインのピアサポートは、やって良かったしかないです。世間一般の方々のDVへの認知として、「パートナーと離れたら終わり」と思っている人が多いのではないでしょうか。離れた後でも、日常生活を送ることが辛いということを、当事者はぜひ話し合いたいのです。オンラインだと、そういった思いの部分の熱量が伝わりにくい印象があって敬遠していたのですが、とりあえずやってみよう!とやってみました。オンラインの環境があり、(パートナーと離れている、子どもが学校に行っているなど)その場の安全が確保できる人が参加しています。コロナ禍でも安心して話せる場所があり、相手の表情を見て気持ちをシェアできる場所を確保できて本当に良かったです。

オンラインならではの進行の課題はあります。一人の持ち時間を決めて話すのですが、声掛けやアラームを鳴らしても、時間を超過してしまう方もいます。こちらも話が盛り上がっているところで声を掛けにくく、難しく感じることがあります。また、対面では静かに頷くだけだったところ、オンラインではリアクションを大きめにしないと画面上で伝わりにくかったり……。ビデオをオンにするしないなど、ルールを確認しながら臨機応変にしています。

(ゆかりさん)
年齢層が幅広いので、オンラインがメインになってしまうことにより、しばらく会えなくなっている人もいます。市の施設が使えるときには、対面のピアサポートも実施していますが、緊急事態宣言中は閉館してしまうため、安定的な開催が難しいです。他の場所での実施も検討しましたが、条件が整っている場所を探すことはなかなか難しいです。ここ(インタビューを行っている会場)は、加害者プログラム用の新しい拠点です。今年の5月にクラウドファンディングを行い、改装費用を支援してもらいました。ただ、ここだと狭いんです。託児も必要で、しかも託児室に声が漏れないような会場となると、かなり限られてきます。託児を諦めたらというのも考えたのですが……。

 

 ―  今後の活動についてお聞かせください

(ゆかりさん)
コロナが落ち着いた後も、オンラインでのピアサポートは続けます。オンラインじゃないと参加できない人に出会ってしまったので、続けないとならないと思っています。心のケア講座も、緊急事態宣言中に初めてオンラインで開催しました。この講座については、今後オンラインで展開をするかどうか、まだ検討中です。でも、対面の活動はやめません。

また、今年の5月から子どものグリーフプログラムを開始しました。暴力を目撃した子どもや、離別や喪失経験した子どもたちを対象としています。子どもたちもピア(仲間)に出会いたい。子どもにも心の傷のケアの場が必要です。親御さんがそのような機会を望んでいる場合もあります。プログラム中、お母さん方は別室で、ピアプログラムを行います。いつも一緒にいる母子を離す機会にもなります。現在は、小学生をメインとしていますが、年代別や、連休・長期休みに合わせたりなど、もっと展開したいと考えています。参加した子どもから「次はいつやるの?」と聞いてくれたのは嬉しかったです。でも、子どものプログラムって、お金かかるんですよね。材料費やおやつ代、スタッフも必要になるので。

やりたいことはたくさんありますが、無理な拡大は考えていません。これまで、専任スタッフも居ない状態で、当事者出身のスタッフたちは、仕事も子育ても家事も、トラウマも抱えながらやっています。だからこそ、「やれる人がやれる時に」というペースが、holoholoらしさだと思っています。

(みぃさん)
着実に、今やっていることを減らさずに、続けること。しかも、無理をせずに。うーん、簡単なことじゃないですけどね。

(ゆかりさん)
痛みをわかっているもの同士が運営していることの良さかなと思います。例えば、業務が増えたときにいろんな人に手伝いをお願いしたら、「手伝えて嬉しい」という声もありました。特におやつの配送などは、積極的にやりたいという方もいます。感謝のメールが来ると、関わったスタッフも嬉しいですよね。支援される側ばかりではなくて、お互い様であったり、なにかやってあげられることは、本人にとっても嬉しいので、そういった機会を作ることも大事です。現在の運営スタッフは、10人ぐらい。みぃさんは、子どもも巻き込んで一緒にボランティアに入ってくれたりもしていますよね。

(みぃさん)
活動のお手伝いに入ることは、子どもにとっても、良い影響がありますよ。

(ゆかりさん)
また、クラウドファンディングは、支援者の方と繋がるきっかけにもなりました。始める前は、スタッフの中でも、クラウドファンディングに対する意見は前向きなものばかりではありませんでしたが、応援メッセージにはとても励まされました。お金だけじゃないものを得られたと思っています。 これからも、新しいことにもチャレンジしていきたいです。

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8月に開催したDVを目撃した子どものグリーフプログラムの様子

 

※掲載の写真は、holoholoより提供いただきました。

※5月・6月に行っていたクラウドファンディングの詳細をご覧いただけます。
「女性への暴力(DV)をなくしたい!札幌に加害者が学び直せる場を。」
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インタビューを振り返って

DV被害の経験のある人たちの集まりだからこその強みが伝わるインタビューでした。コロナ禍でDVの増加、孤立の深刻化が起きることを見通し、すぐにオンラインを取り入れる。お互いの痛みを理解し合い、スタッフ同士が支え合いながら無理せず活動をしている姿にも魅力を感じました。「コロナ禍だからこそ、やらなきゃならない活動」という言葉に、市民活動が果たしている役割の多さを実感します。(定森)

 

 団体概要 

  • 団体名 holoholo
  • 代表者 代表 まつもとゆかり
  • 主な活動場所 札幌市北区、中央区等
  • メールアドレス peer.holoholo@gmail.com
  • URL http://holoholo.hvlb.org btn_kotira4.gif
  • 関連ページ(2020年度助成事業) btn_kotira4.gif

 

 

インタビュアー 
定森光(さだもりひかる)
北海道NPOサポートセンター
※インタビューは、2021年7月2日にオンラインにて行いました。

記事作成
佐藤綾乃(さとうあやの)
支援協議会事務局

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